ビジネス

2019.02.23

空を飛ぶCAたちを二分する、米国航空業界のチップ論争

SeventyFour / shutterstock

2019年になり、米国史上で初めて、機内サービスに対してチップをとり始めた飛行機会社が現れた。

ますます激化する価格競争の中、価格比較サイトには表示されない、または顧客が見落としがちなコストでマージンを稼ごうとするという航空業界だが、ついに「聖域」にも手が出されたと、大きな話題となっている。

その「勇敢」な航空会社の名前は、フロンティア・エアライン。全米100の都市を結ぶ、コロラド州に拠点を置く航空会社で、80年代に一度倒産したが、それ以前も含めれば60年の歴史を持つ、全米でも大手のひとつだ。

近年、米国の航空会社は、預ける荷物を1個目から有料にしたり、機内の飲み物をアルコ―ルはもとよりソフトドリングまでも有料にしたり……。場合によっては機内持ち込み荷物にも数千円の料金を取るところもあり、それが各会社でバラバラであるだけでなく、マイレージ会員のステータスによっても変わるため、もはや価格比較サイトが提示する内容だけでは、本当にどの航空会社が安いのかわからなくなってきている。

フロンティア・エアラインは、スナックやソフトドリンクを有料にし、そしてその支払いは他の多くの航空会社同様、クレジットカードのみで受け付ける。その際、カード決済をする小さなタブレットを乗客に渡すが、決済金額を確認する画面に進む際に、「チップはどうしますか?」という画面が出てくるようにした。そしてお客が、10%とか15%、または20%というボタンをタッチパネルでクリックすることで、チップ額が加算され、合計金額を確認して、「OK」のボタンを押すという仕組みだ。

もちろん、「チップなし」というボタンもあるので、けっして強制ではない。この「チップ選択」画面自体は、一般のレストランでもだいぶ導入され、浸透してきている。

しかし、さすがにサービスをしてくれている人間の目の前で「チップなし」を選択する人は少数で、確率よくチップを得る手段として、サービスする人間には喜ばれ、強制されていると感じる顧客には疎んじられている。

昔からあったチップと同じ仕組み

この始まったばかりの制度、全米のキャビンアテンダント(CA)の労働組合のフロンティア航空部門の責任者によれば、約半数の同社のCAがこの制度を歓迎し、残りの半数はむしろ「やや侮辱された感じだ」と不快感を示している。
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文=長野慶太

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