トリスタン・ハリス / デザイン倫理学者
人は往々にしてハイテクに翻弄される。それは頻繁にメッセージの受信を告げるスマートフォンや、再生をなかなかやめられない動画サイトなどさまざまだ。
じつは、これは当人の意志の弱さによるのではなく、「そもそも人が、テクノロジー依存症に陥るようにデバイスがデザインされているから」である。
中毒問題を解決するためのデザインは存在する──そのことに気がついたハリスは、当時「製品哲学担当者」として在籍していたグーグルを「デジタル中毒を世界から根絶したい」という決意と共に退社し、Center for Humane Technologyを設立した。
スマートフォンにコントロールされない方法など不可能に思われたが、例えば「自動通知」と「メッセージ」のバイブレーションを変えるなど、簡単なことでも改善できる。こうするだけで区別が付き、「重要なメッセージのみに対応する」「相手に自分が集中モードだと知らせる」など即座に行動できるのだ。
もちろん、ハリスは「テクノロジーそのもの」を否定しているわけではない。テクノロジーは人の目標達成に大いに役立ち、人類をこれからも前進させていく。大事なのは「線引き」であり、「人類がきちんとテクノロジーを制御すること」なのだ。
エンリケ・アレン / デザイナーファンド共同創設者
アレンがデザイナーに投資するのは、独自の視点でビジネスを創出でき、テクノロジーではなくブランドとUX(ユーザーエクスペリエンス)の価値最大化を実現できる存在はデザイナーしかいない、という信念からだ。
デザイナーファンドがこれまでに投資したのは、地域コミュニティに問題解決のプラットフォームを提供するネイバーランド、太陽エネルギーシステムへの投資を集め、安価でクリーンなエネルギーの普及を目指すソーラー・モザイクなどがある。一方で、アレンはスタンフォード大学の講師も務めている。
キャット・ホームズ / グーグル UXディレクター
「インクルーシブデザイン」とは高齢者、障害者、外国人などデザインのプロセスから除外されるマイノリティと共に、理想的な社会を考えていくデザインのこと。
全体最適化のデザインは往々にしてマイノリティのことは考えられないため、排除されてしまうことが多い。ホームズはいつもそんな人々に光を当ててきた。
ホームズは、2014年から17年までマイクロソフトのインクルーシブデザインのプリンシパルディレクターを務め、18年にはグーグルに参画。テクノロジーが中心ではなく人々が導いていく未来を理想に掲げ、実現に向け邁進している。
ケイティ・ディル / リフト デザイン担当副社長
2017年6月に50億乗車を突破したと発表されたウーバー。その後を追いかけるのが、リフトだ。
そのデザイン担当副社長に就任し、幅広い意味でのデザイン監督を行っているのがディルである。ディルは前職Airbnbにおいて「物件」ではなく「体験」を提供することを信念にして同社のホームページのイメージを刷新。確固たる企業アイデンティティを確立した。
「体験のデザイン」を専門とするディルは、戦略立案やユーザー調査など幅広く監督。その知識と経験は19年にIPOが迫るリフトにとって追い風となるだろう。