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(左から)ネイサン・ブレチャージク、ブライアン・チェスキー、ジョー・ゲビア

「宿泊」という概念を変えたAirbnb(エアビーアンドビー)を生み出した、名門美術大学出身の創業者たち。将来を見据えた彼らが次に目指すのは、自社のアマゾン化で「旅」そのものを変えることだ。


ブライアン・チェスキー(37)は落ち着きがないことで知られている。その彼が32秒間もじっと座っていた。米カリフォルニア州サンフランシスコにある民泊企業「Airbnb」の本社の特別会議室で、最高経営責任者(CEO)である彼は手にしたiPhoneに意識を集中していた。

見ていたのはマーケティング用の動画で、カリフォルニア州北部の動物保護区でゲストがヤギと触れ合う様子だった。Airbnbが2年前から始めたツアーガイド・ビジネス「Airbnb体験(エクスペリエンス)」の一コマだ。ヤギは最後にひと鳴きする。

見終えると、チェスキーは深く息を吐いた。

「グッとくるねえ」

Airbnbは、宿泊施設といえば同じようなホテルばかりだったこの世界に、ユニークかつリーズナブルな選択肢を提供することで急成長を遂げてきた。

創業からの10年間、他人の車に乗せてもらったり、「右にスワイプ」でデート相手を探したり、他人の部屋に泊まったりすることに抵抗を持たないデジタル・ネイティブが登場するなか、310億ドル(約3兆5000億円)の企業評価額のもと、30億ドル以上の出資を受けるまでになったのだ。

その過程でチェスキーと2人の共同創業者、ジョー・ゲビア(37)、ネイサン・ブレチャージク(35)は、Airbnbの持ち株から37億ドルずつを手に入れ、Airbnbは、グーグルやゼロックス、ウーバーなどと同様に、社名が「動詞」となったレアな企業の仲間入りを果たした。

しかしその種の資金には独自の課題がついて回る。「ユニコーンの呪い」と呼んでもいいだろう。すなわち、エクスペディアやヒルトン、アメリカン航空を上回る企業評価額をAirbnbが得ている根拠を示せるかということだ。

上場済みのより大規模な競合企業は約27%の粗利を得ているのに対し、Airbnbは30億ドルの軍資金があるにもかかわらず、2017年には26億ドルの売り上げに対し、キャッシュフローベースでわずか1億ドル(約4%)の利益しか上げていない。今後いかにして成長を続け、ベンチャー投資家が要求する10倍のリターンを達成するか。

早ければ2019年半ばと目されるIPO(新規株公開)が、これらをより一層の急務にしている。

だがCEOのチェスキーは、投資家から何十億ドルもの資金を受け取っているにもかかわらず、利益を最重要視していない。しかもこう言うのだ。

「かつては金銭的な評価基準ばかりが重視されていたけど、今では企業も理解しつつあると思う。我々には暮らしを向上させていく、より大きな社会的責任があるのだということをね」

チェスキーはアマゾンに着想を得て、Airbnbを「旅行者のための百貨店」にしたいと考えている。ベゾスの足跡に従い、何百ものビジネスやカテゴリーに迅速にスケールアップできるよう、Airbnbの技術を改良しつつあるのだ。

チェスキーは、自社を「21世紀の企業」にしたいと言う。すなわち、金銭的な成果のみならず、ゲストやホスト、従業員、都市といったステークホルダーをも大事にする企業。チェスキーの観点からすれば、これがサバイバルの方法なのだ。

文=ビズ・カーソン 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=町田敦夫

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