かくして18年2月、Airbnbは本職の民宿や貸別荘、ブティックホテルなどを歓迎する姿勢に転じ、ウェブサイト上にそれぞれ独立したカテゴリーを与えた。Airbnbの独自性が損なわれるとしても、それは明らかな成長への布石だった。
一方で、Airbnbはまだ幅広いサービスは提供できていない。ブッキング・ホールディングスを成長させてきたのは、数々の戦略的な企業買収であり、同社はAirbnbが始めたばかりの事業を、すでに数多く手にしている。航空券ならカヤック、レストラン予約ならオープンテーブル、レンタカーならRentalcars.Com、アジア旅行ならアゴダ、格安のパッケージツアーならプライスラインという具合だ。
ブッキング・ホールディングスのグレン・フォーゲルCEOによれば、次の10年の目標はそれらのサービスをすべてつないで、1つの旅の初めから終わりまでをシームレスに予約できるようにすることだという。
チェスキーも「シームレスな旅」というビジョンは共有しており、ホテルチェーンや大手旅行会社、交通機関などの買収も視野に入れている。ただ成長の方法を金で買うことに関心はなく、Airbnbの差別化のポイントとなる「帰属意識」を損なうようなことは拒絶する。
「Airbnbはインターネット上の他のどこにも存在しないユニークな体験を提供することに重心を置き続けるべきだと思う」
それがチェスキーの考えなのだ。
「アマゾン化」の実現のために
Airbnbの「アマゾン化」を夢見ているのだとしたら、チェスキーはそれが長い道のりであることを承知しているだろう。彼はアマゾン化のために、プライム部門のトップだったベゾスの腹心、グレッグ・グリーリーを雇い入れた。アマゾンで18年間を過ごしたグリーリーは18年3月にAirbnbに加わり、中核事業を監督するホームズ(宿泊先)部門の指揮に当たっている。
彼がアマゾンに入社した当時、同社に本以外の商品を売ることができるのか疑問視されていた。そのグリーリーが今、事業拡大の必要に迫られたAirbnbにいるのだ。グリーリーは言う。
「旅行業にはアマゾンサイズのチャンスがある」
実際には、アマゾンと比較するのは多くの点で無理があるだろう。米国内の小売業の市場規模は5兆8000億ドルもあり、旅行業界をどれほど広義でとらえたところで規模では大きく劣る。しかもアマゾンが販売するものはすべて大量生産品だが、Airbnbはその対極を目指している。
チェスキーによれば、Airbnbで大人気の物件の1つに、マッシュルーム・ドームがある。カリフォルニアの海岸にある、キノコ型の屋根を乗せた1泊130ドルの小さなキャビンだ。
「残念だけど、それがどれほど儲けを出そうと、同じものをあと100万軒建てるわけにはいかない。だから僕らの会社は多角化せざるを得ないんだ。僕らの手がけることはどれも、それほど大きくはできない有限なものだから」