新たな食のアワード「ワールド・レストラン・アワーズ」の舞台裏

5月にプレ・イベントが行われた際の審査員集合写真。メンバーには、マッシモ・ボットゥーラ、アレックス・アタラ、ダニエル・フム、エレナ・アルザックなどの著名シェフも揃う

2月18日、パリで新しいレストランアワード「ワールド・レストラン・アワーズ」が発表される。

「世界のベストレストラン50」の立ち上げに携わったジャーナリスト、ジョー・ワーウィックとアンドレア・ペトリニが、イベント会社のIMGとタッグを組んでスタートしたこのアワードは、世界37カ国のメディアと著名なシェフたち、計100人が審査員を努める。ジェンダーのバランスを取るため、男女比が50:50というのがユニークだ。

私もシンガポール唯一の審査員として選ばれ、アワードの設立や選考を間近に追うことができたため、今回はその経験を紹介したい。

2018年5月、全審査員へ呼びかけがあり、パリでプレイベントが行われた。ワーウィックとペトリニから「このアワードで重要視しているのは、その選考過程の透明性」との説明があり、20〜30人のグループに分かれ、審査員が一人ずつアワード案を提案。その選考方法も含め、どんな方向性が理想的かについてのディスカッションが行われた。会話はグループ毎に全て録音された。

それをワーウィックとペトリニが統合し、8月に18のアワード案を提起。審査員のフィードバックを経て、全18部門のアワードが決定した。

アワードは、大きく分けて「ビッグ・プレート」と「スモール・プレート」の2カテゴリーで、ビッグ・プレートは主にレストランの料理や空間などを対象とした、「今年の新店(Arrival of the Year)」「エシカル部門(Ethical Thinking)」など11部門。これら各部門の勝者の中から1店が「今年の名店(Restaurant of the Year)」となる。

一方スモール・プレートは、「インスタグラム王(Instagram Account of the Year)」「タトゥをしていないシェフ(Tattoo-Free Chef)」などのユニークな6つの部門がある。

こうしてアワードの概要が固まった10月には、全審査員が、それぞれのアワード毎に最低1件、最大5件の推薦を、推薦文と共に事務局へ送付。そこで集まったリストに対し、各審査員が5票までを投票する。審査員にはシェフが含まれているが、当然ながら、自らや家族が経営・投資する店はもちろん、過去も含めて働いた店は選出不可。また、推薦・投票ともに自らの住む国に限らず、全世界が対象となっている。

そして、その投票結果をまとめたノミネート一覧「ロングリスト」が、2018年12月に発表された。ここでは、日本関連のものをご紹介していく。

予約なしでも入れる日本の名店

2017年9月1日〜2018年9月30日までにオープンしたレストランが対象となる「今年の新店」には、東京から2店。デンマーク「Noma」の開発チームで活躍したトーマス・フレベルシェフによるレストラン「Inua」と、「鮨とかみ」を経て独立した佐藤博之氏の「はっこく」がリスト入りした。


イヌアの「アカシアと蜂の子とご飯とバラ花 だしのリダクション」

店のスペシャリテがある「看板料理のある名店(House Special)」には、世界各国色々な種類の豚肉を食べられる東京のとんかつ専門店「豚組」、うなぎの老舗「尾花」。

「予約なしでも入れる店(No Reservations Required)」には、京都の焼肉・ホルモン焼きの店「アジェ木屋町団栗店」、東京の寿司職人がプロデュースするフィッシュバーガー専門店「デリファシャス」、焼肉「ゆうじ」が選ばれた。
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文=仲山今日子

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