──新世代のリーダーたちによるスタートアップだけでなく、世界的企業のフィリップスなども、サーキュラーエコノミーの取り組みを行っているんですね。
フィリップスは病院に医療機器を販売していますが、今までは「新しいモデルを開発しては買ってもらう」というビジネススタイルだったので、どうしても買い替え時には大量の機器の廃棄が発生していました。
そこでサーキュラーエコノミーの観点を取り入れ、「商品の販売」の代わりにリース契約(サブスクリプション)による「サービスの販売」を始めたんです。リペアやメンテナンス、交換などのサービス提供を行うことによって、製品を長く使ってもらえるビジネスモデルに転換しました。
さらに、使用後ほぼ100%処分されていた医療機器の90%が、再びフィリップスの元に戻るような仕組みになっています。それにより同社は、その医療機器を再び別の病院にリースしたり、新しい製品の開発に繋げて再活用できます。その分「新しい資源に頼らないビジネス」が展開できるのです。
こうしたサーキュラーエコノミー事業は現在、フィリップスの全体収益のうち10%を支えるまでに成長しています。
売って終わりという一方通行から、売った後も継続的にビジネスを行うという循環型への発想変換により、新しい収益モデルを築いているところが理にかなっています。アイデアと意思さえあれば、社会にも、企業や人にとっても良い循環は必ず生み出せるということを証明していますね。フィリップスに限らず、デルやヒューレット・パッカード、イケア、ネスレなどの大企業でもこうした取り組みはどんどん増えています。
──安居さんが今日穿いているジーンズも、サーキュラーエコノミーの概念で生み出されたプロダクトなんですよね。アパレル産業は、エネルギー産業の次に環境負荷が高い産業とも言われていますので、非常に気になります。
こちらは、MUD JEANS(マッド・ジーンズ)というブランドのもの。素材は契約農家から仕入れたオーガニックコットン100%で作られているので穿き心地がよく、最近いつも愛用しています。
でも実はこれ、月800円でレンタルしているんです。購入者は一年後に返却して新しいジーンズと交換しレンタルを継続するか、そのまま買い取るかのどちらかを選べます。返却したジーンズはリサイクルされ、再び製品として生まれ変わります。これは、「5.サービスとしての製品」というビジネスモデルですね。
ファストファッションの影響もあり、近年ジーンズは安く買えるようになったのですが、マッド・ジーンズの調査によると、安いジーンズは耐久性がないため、購入後1年で80%が穿かれなくなってしまうそうです。
それが続くと資源はどんどん消耗され、人々は物を大事にしなくなり、完全に悪循環に陥ります。マッド ジーンズのようなサブスクリプションモデルは収益的にも安定しますし、素晴らしいシステムですね。