ビジネス

2019.01.27

未来型ビジネスの街、アムステルダムのサーキュラーエコノミー最前線

アムステルダムにあるサーキュラーエコノミープロダクトを多く扱う「The Maker Store」


まずこちらは、「1.サーキュラー型のサプライチェーン」というビジネスモデルを活かしたFairphone(フェアフォン)です。



ボディが透明で、中の部品がすべて透けて見える仕様がユニークですよね。現在ヨーロッパで、エシカルバンクや企業が率先して取り組み始めている「ビジネスの透明化」「公平性」を象徴しているかのようです。

フェアフォンは簡単に分解でき、各部品を自分で取り替えることができます。例えばカメラが壊れてしまったら、カメラの部分だけを外して交換が出来る。部品は100%リサイクル・リユースできるようにデザインされているため、新しいものをオンラインで注文して取り付け、壊れた部品を返送すると新しい製品の製造に活用されます。

また、一般的なスマートフォンの製造に使用されているレアメタルは、それをめぐってアフリカで紛争が絶えません。このような紛争鉱物は武装勢力の資金源になることが多いのですが、フェアフォンに使用されている資源は、紛争原因にならない地域のものが使われており、すべての取引先がWebサイトで公開されています。

たしかに最新のiPhoneに比べると機能面は劣りますし、安価な紛争鉱物を使用していないため、日本円で8万円ほどと手頃ではありません。また、Androidを使用しており現状アップデートができないため、4〜5年でアプリが使えなくなってしまう課題もある。それでもヨーロッパでは2013年の発売以来、これまでに13万台以上を売り上げ、現在も予約待ちになるほどの人気なんです。

──機能ではなくサーキュラーエコノミーのストーリーに興味を持つカスタマーが増えているのは印象的ですね。

次に紹介したいのは、2015年、100万人以上のシリア難民がヨーロッパに逃れてきた際に着用し、廃棄されていたライフジャケットを活用したPCケースです。ビジネスモデルとしては、「2.回収とリサイクル」に当たります。



こちらは社会課題の解決を掲げるスタートアップのMakers Unite(メイカーズユナイト)が手掛けるプロダクト。彼らはただリサイクルして物作りを行うだけでなく、作り手として難民たちを起用することで、アムステルダムで新たな雇用も創出しています。

社会課題の解決から生まれたプロダクトというと少し身構えてしまいますが、このPCケース、単純にデザインがお洒落じゃないですか? 社会にとって良いものでも、デザインが良くないと消費者に手にとってもらえません。デザインも良くて、ソーシャルグッドなストーリーが詰まっていれば、こうしたプロダクトにありがちな価格の壁さえ簡単に乗り越えてしまうのが、興味深いところです。
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文=国府田淳

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