「とはいえ、ここまでのスピードと規模でのIPOとは、完全に想像を超えていました」
スマートフォンへのデバイスシフトとCtoCサービスへの需要拡大という時流を見事に読み、ミクシィでCFOを務めた取締役兼COOの小泉文明など有力な経営陣を次々と加えていったメルカリ。投資家として、要所要所でしか口出ししなかったという。
「本当にホームランになる会社は、経営チームが優秀すぎて、あまり手が掛らないんですよ(笑)」一方で、高宮は「VCにとって重要なのはそれぞれの案件での勝ち負けではありません」と話す。
投資先一社一社の“損得”ではなく、いかに投資先ではない起業家も含め、事業の成長のために、支援できるか。そして、起業家・スタートアップが成長することで、スタートアップ業界全体のパイを大きくできるか──。エコシステム全体のために投資すれば、個別の結果は自ずとついてくる。高宮の大局的な視野は、そんな投資哲学にも表れている。
「今まで一人ひとり、一社一社しっかりと支援をしてきたからこそ『高宮さんは良かったよ』と言ってくれた起業家や投資家がいて、メルカリにも出資できたわけですから」
メルカリへの投資を始めた14年は、高宮がキャリア開始時に投資した会社がIPOやM&Aを果たした後。うまくいかなかったこともあるが、起業家とともに歩み、起業家に育ててもらったことの積み重ね経験が、当時のそして現在の高宮を築いたという。
高宮や山田は、ミクシィ創業者の笠原健治や、グリーCEOの田中良和らと共に、世間から「76世代」と呼ばれている。「とりわけ僕らは、横のつながりが強い」(高宮)。日本のスタートアップ・エコシステムがまだ存在していない時代から、同世代で積み重ねた信頼がキャリア、経験と結びついた相乗効果が、日本初のユニコーンを生んだと言っても過言ではない。
高宮の次なる目標は壮大だ。
「メルカリの成功を、一発限りの花火にはしたくない。今回のメルカリの上場で、日本のエコシステムのレベルは一段上がりました。だからこそ、継続的にユニコーンを生み出していき、僕らVCが新産業創造をするプラットフォームになれるか、チャレンジしていきたいですね」