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メルカリ 小泉文明(左) ラクスル 松本恭攝(右)

2018年5月にマザーズに上場したラクスルと、6月に上場したメルカリ。ラクスルは登録ユーザー数が60万人を突破し、メルカリは国内外合わせて1億ダウンロードを突破している。両サービスはアーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間にある「キャズム」を超え、認知度をマスへと広げていくために何をしたのか。経営者は、マーケティングにどのように関わっていくべきなのか。

タイミングを判断できるのは経営者だけ

──経営者はマーケティングにどこまで精通して、どこまでコミットすべきでしょうか。

小泉:ファーストリテイリングの柳井正さんは、いまだに自分でビラをチェックしているそうです。値段を決めて、どうやって売るのか。それを考えるのは商売の基本。そういう意味では、すべての経営者は本質的にマーケティングをやっているといっていいと思います。

ただ、各論まですべて経営者が精通する必要もない。たとえばクリエイティブに関してはプロのエージェンシーがいるし、社内にマーケティングに精通している人がいたりして、経営者が自分でやらなくてもいい選択肢がそれなりにあります。

一方、経営者しかできないのがタイミングの見極め。ビジネスモデルやキャッシュポジションによって踏み込むべきタイミングは違います。その判断を間違えると、マーケティング効果が大きく変わってしまう。とくにテレビCMは億以上のお金がかかる。経営者以外が判断するのは難しい。

松本:経営者がコミットすべきは、小泉さんが言うようにタイミングの判断、そしていくらつぎ込むのかという規模の判断、結果を見てどうするのかという判断です。

とくに重要なのは規模の判断です。スタートアップの場合、マーケティング費用はキャッシュフローからではなく調達した資金の中から出していくことになります。経営者の仕事は、ビジョンを示すこと、ヒト・モノ・カネの経営資源を調達すること、そして集めた経営資源を事業に配分することの3つ。マーケティングの規模の判断は、このうち資金調達と事業への配分の2つに深くかかわってくる。そこを人任せにしてはいけない。

小泉:もう一つ付け加えるなら、クリエイティブの世界観。できあがったものがビジョンとズレていると、お客様も「何か違う」と感じて離れていってしまう。

ある会社の失敗事例として聞いたことがあるのは、経営者がクリエイティブを見て、「これは違うな」と思ったけど、プロが言うならそういうものかとやってみたら、見事にすっ転んだそうで。経営者の勘というのも大切だと思います。

──両社は14年にテレビCMを開始されていますが、テレビCMを打つタイミングを、どのように判断したのでしょうか?

小泉:お客様の満足度が低くてリテンション(既存顧客の維持)できていないのにテレビCMに踏み込みすぎると、穴の開いたバケツに水を放り込むような悲惨な状況になってしまう。一方、遅すぎてトレンドが終わってしまった、機を逃してしまったというケースもよく見かけます。

僕たちの目安は200万ダウンロード。100万未満だと名前さえあまり知られていない。200万を超えてくると、メディアで見たことがあるとか、知り合いで使っている人がいて、「気になる」という状況になってくる。そこでテレビCMを打って一気に認知を取りにいきました。

松本:ラクスルは、バジェット(予算)でタイミングを決めました。当時はオンライン広告はリスティング広告が中心。検索クエリ数に限界があり、14年にはその上限が見えてきた。成長の速度を緩めずに伸び続けるためには、マーケティングバジェットの拡大が必要。そこで、より大きなマーケティングチャネルとしてテレビCMを選び、14年から放送を開始しました。メルカリさんも、テレビCMを始めたのはだいたい同じ時期でしたよね。タイミングとしては、ちょっと早めに見えましたが……。

村上 敬 = 文 西村裕介 = 写真

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