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2019.01.17 06:00

外資金融は「終わった」のか? 正道を貫かない会社は存在意義を失う

著者・時国司 オービス・インベストメンツ(日本法人)代表取締役社長

著者・時国司 オービス・インベストメンツ(日本法人)代表取締役社長

2007~2008年のリーマン・ショックは、顧客本位と対極にある行動が引き起こした危機であり、二度と繰り返してはなりません。

リーマン・ショック以降、「外資金融は終わった」という記述を見るようになりました。しかし、そもそも「外資」というと日本企業以外世界中企業が全て含まれてしまうため、一般化するにはあまりに広範です。

書籍やドラマ、映画の影響もあって、「外資金融」と聞くと、ブラック企業、ハゲタカファンドといったイメージが先行しますが、そういった会社もあれば、真逆の会社もまた存在します。

重要なのは、外資系であるか日系であるかに拘らず、顧客本位の業務運営、即ち正道を貫くことができるかどうかではないでしょうか。それができない会社は早晩終焉を迎えると思いますし、そうあるべきだと私は考えています。

正道とは何か?

正道とはなんでしょうか?英語ではよく「Do the right thing.」という言い回しをします。会社の一員として意思決定をする各局面において、何が正道なのかを考え、当該観念に沿って意思決定をすることです。

そして、企業(便益提供者)が、何が正道なのかを考えるうえで中心にくるのは、顧客の便益であるべきだと私は考えています。なぜなら、どのような財・サービスであっても、便益提供者と受益者との間には情報の非対称性が一定程度存在するからです。

極端な例を挙げれば、歯医者が顧客よりも自分自身(株主も含めて)の収益を重視した場合、まだ健康な歯でも抜いてインプラント治療を施せば、収益は拡大します。(実際に私が経験したことです。そのときには、セカンド・オピニオンをとったことで抜歯を免れ、「ただの虫歯ですよ」と一日で治してくれました。)食品の偽装表示なども類似の例と言えるでしょう。

「いつかはバレて天誅が下る」と考えることもできますが、抜いてしまった歯は戻ってきませんし、損なった健康も戻ってきません。

情報の非対称性が大きいほど、便益提供者は職人でなければならないと私は考えます。そして、職人と顧客との利益が一致していることが肝要です。

先ほどの歯医者の例を使って考えてみましょう。

患者の来訪目的(求める便益)はなんでしょうか?おそらく「歯が治ること」です。

ここで、歯医者の目的(目指す便益)が「歯を治すこと」であれば、利益は一致しています。もし「お金を儲けること」であれば、利益の不一致が起きています。

利益の不一致は、先述のような行為を生み、患者に取り返しのつかないダメージを残します。

ここでの難点は、歯医者が正しい行動をとったかどうかのチェックが難しいことです。セカンド・オピニオンを取得しても、2軒目の歯医者が目指すものも「お金を儲けること」であれば、患者は知らぬ間に不利益を被り、一生ダメージを抱えて生きることになります。

医学部や歯学部の入試に、倫理観を図る要素を導入するというのも、審査の難しさを考えると効果に疑義があります。そこで重要になるのが、医師側のインセンティブ構造です。

例えば「セカンド・オピニオンでより簡易的な施術でOKだったことが判明したら評定に響く」などの機能を設けておけば、問題の未然防止に向け大きく前進すると思います。人間は、インセンティブに沿って行動する性質を持つものだからです。

職人的メンタリティーを持つ人だけを採用し、職人だけで構成される会社をつくれればベストですが、その難しさに鑑みると、正しいインセンティブ設計を図る方が近道です。即ち、どんな組織でも、顧客の便益拡大にインセンティブを設定すれば、行動を相当程度コントロールできます。
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文=時国司

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