2. ビジネスはサブスクリプション、“文脈型広告”全盛へ
コンテンツの総量は増え続け、消費スパンは非常に短くなっている。一方で良き作り手はどんどん囲い込まれ、その価値が高まり、ひとつのコンテンツにかかる制作費は確実に上がっていく。するとやはり、無料でコンテンツを提供することが困難になってくる。
この数年で、ネットフリックスやアップルミュージックなど有料のコンテンツサービスが浸透し、消費者の間でも「いいコンテンツを楽しむには、お金がかかる」という感覚が徐々に醸成されてきた。月額課金型のテキストメディアはすでに2018年にも成長を遂げているが、今年は「無料から有料への移行」も進みそうだ。
一方、コンテンツの流通には引き続き苦労することになりそうだ。フェイスブックなどSNSに流通を依存してきたメディアは、そのアルゴリズムの変更で、この1、2年軒並み苦戦を強いられてきた。プラットフォーマーへの配信自体は大きな収益に繋がらず、自社サイトへの流入狙いにとどまる。
コンテンツを「見てもらう」ための奮闘が続く中、今後はメディア単体というより、メディア間の相互連携やプラットフォーマーとのより効果的な連携により「面を取っていく」戦略が必要となっていくだろう。
業界は異なるが、昨年末、アパレル大手企業が通販プラットフォーマーへの出品を取りやめたと報道された。ビジネス上、またブランドコントロール上、自社サイトや既存の流通経路での販売の方が合理的ということになれば、退店の動きが続くかもしれない。これはコンテンツにおいても同様の動きが起きる可能性もある。
ウェブ上の1PVの「価値」を正確に算出したい、というメディアの願いは強い。
昨年10月には、キー局や地方局、全国紙、地方紙、出版社、ウェブメディアなど32社が合同で、メディアとコンテンツ価値の検証と広告価値の向上を目的とした「コンテンツメディア価値研究会」を立ち上げたと発表した。「ネット広告の品質向上と、コンテンツメディアの価値を反映した新たな広告価値指標を普及するために活動していく」としている。
各メディアのオーディエンスや信頼感を加味し、制作・配信するコンテンツの価値をPV以外の指標で正確に測定する──。この動きは広告部門から始まり、メディアビジネスに少なからず影響を及ぼすだろう。
いずれ編集コンテンツでも、コンテンツ自体の質や価値、影響力が正確に測定できるようになるのではないか。そうなれば、数値化が難しいとされてきた編集者やライターの力も測定できる日が来るのかもしれない。
「見える化」という点では、11月末にも注目すべきニュースが飛び込んできた。日本経済新聞社が最新のデジタル技術を活用し、新聞広告の効果を可視化するという。
日経電子版の「紙面ビューアー」の機能を強化し、利用者がどの広告面を読んでいるのかをビッグデータとしてわかるようにしたとしている。驚くべきは、掲載日の正午に「速報リポート」、翌日以降に「詳細リポート」を広告主に開示するという、ネット広告のレポーティングに匹敵するスピード感だ。
数百万部を誇る新聞の1面広告は、もしかしたら数百万PVと言えるかもしれない。これまで「広告掲載の結果の数値化が難しい」として測定可能なネットに新聞から広告費が流れてきた経緯を考えると、一つのターニングポイントになるかもしれない。