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インアゴーラ 翁 永飆

アリババ、テンセント、アマゾンなどに在籍した中国や日本の優秀な人材が次々と加入し、直近の大型ラウンドでは伊藤忠商事やKDDIなど国内大手事業会社から約76億円を調達。これまでも国内外のVCから出資を受け、次のユニコーン企業と評されているのが「日中越境EC市場」を主戦場とするInagora(インアゴーラ)だ。

すでに中国EC市場にはアリババやアマゾンといった巨人がいるが、同社の勝算はどこにあるのか。「バリューチェーンの長さ。消費者の新しい需要を喚起できますから」と翁永飆は語る。

「中国人が気に入りそうな商品を日本で発掘」「ECアプリ・豌豆公主(ワンドウ)への出品交渉」「中国人消費者に“刺さる”ように情報を作りSNSなど多方面に発信」

「マーケットを分析して中国の物流ラインへのせる」。これだけの手順があるからこそ、東京120人(半数が中国人)、北京140人(9割が中国人)など計310人を擁するハイブリッド組織の強みが存分に発揮され、他社の追随を許さない。

日中から優れた人材が集まるのは、3兆円に迫ると予想される日中越境ECの圧倒的な市場規模の魅力に加え、翁のこれまでの経歴にも関係がある。中国出身の翁は横浜の大学へ留学後、伊藤忠商事への入社を経て日本で起業。その後はシリアルアントプレナーとしてIT業界で常に結果を出してきた「ハイブリッド起業家」だ。

そんな彼がトップにいるからこそ、「毎週月曜日に行われる3時間のテレビ会議」「日中それぞれに寮を設け、海外出張者に対して1カ月ほどの長期間にわたるオフィス勤務という“異文化体験”をさせる」など、文化・言語のギャップや社会環境の変化や価値観に対する理解不足で空中分解してしまいがちな企業のチームワークの醸成にも細心の注意を払うことができる。

彼らが次に見据えるのは「グローバル」だ。5兆円の売上高を誇るタイ最大の複合企業チャロン・ポカパン(CP)と資本・業務提携し、東南アジアへのEC展開などの可能性も高めた。さらには、中東を含める海外での越境ECも見据えるなど事業拡大の手を緩める気はない。

「日本企業の未来は暗い、などと肩をすくめる悲観論者に希望を示したい。消費がなければ作ればいいんです」と語る翁の表情は自信に満ちている。


翁永飆◎インアゴーラ代表取締役CEO。伊藤忠商事に入社後、JWord、インターパイロン、キングソフト、ACCESSPORTを創業。2014年5度目の創業となる同社を設立。

文=松浦朋希 写真=小田駿一

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