味わう、蒐集する、投資する ふたりの賢人が指南するワインの遊び方

投資家・経営コンサルタント 吉川慎二

「ワインは墓場まで持っていける唯一の芸術品」と味わうことを第一とするワインコレクターの吉川氏、「ワインは世界共通の通貨であり言語」という渡辺氏のオークショニアとしてのワイン、それぞれの楽しみ方。


ワインは消費する芸術品
──吉川慎二氏(投資家・経営コンサルタント)


「ワインは東京に3500本、ここ(軽井沢)に2000本ほど。計5500本ほど持っているかな」とさらりと語るのは吉川慎二氏。メリルリンチ自己勘定投資部門のアジア太平洋地域統括本部長を経て、現在は投資コンサルタントとして独立している吉川氏のワイン道楽は少々度を越している。

「ワインをもっと深く知りたいと思ったのは、30年ほど前。家内がまだガールフレンドだったころ、ディナーにでかけた代官山のフレンチでした。当時はボルドーとブルゴーニュの違いすらよくわかっていなくて、ワインのチョイスもソムリエの言いなりに。その後、カリフォルニアワインを多く飲んでいたのですが、出張していたNYで同僚から『ブルゴーニュを知らなければワインを知っているとはいえないね』と言われ、生来負けず嫌いなものですから(笑)、知らないなら勉強してやろうとワインスクール(アカデミー・デュ・ヴァン)に入学したんです」
 
ところが、何の手違いか、入ったのは上級クラスだった。

「周囲はみなセミプロのような方々で、ぼくだけ素人。ここでまた負けず嫌いが発揮されて、2007年にはワインエキスパート(日本ソムリエ協会)を取得しました。そして12年には第5回全日本ワインエキスパートコンクールで優勝することができました」
 
14年にはエキスパートとして初めて日本ソムリエ協会の理事に就任し、最近ではワインエキスパートがワイン愛好家を育成する「J.S.Aワイン検定」の講師も務めている。

「ワインは生産者やディストリビューターなど、いわば業界の意向が市場を支配しており、消費者目線でのプロダクトになっていないなと感じています。ぼくはワインの買い手としてその楽しみ方を伝えていきたい」


吉川氏のセラーにあるDRCリシュブール1942(左)とDrBaroletのグラン・エシェゾー1928(右)

昨年からオーストラリアのソムリエ・ワインエデュケーターであるダン・シムズとパートナーシップを組み、ピノ・パルーザやロゼ・レヴェルなど、消費者目線でワインを楽しむイベントを積極的に開催。ワインの多様な楽しみ方を提案している。しかし、投資の専門家である吉川氏はワイン投資には消極的なのだという。なぜだろうか?

「ワインの歴史はそのまま人々の生活史ともいえる興味深い存在。ワインをテーマに旅をすることも楽しいし、ぼくにとってワインは消費する芸術品なんです。(飲んでしまえば)絵画とかと違って唯一墓場まで持っていけるしね(笑)」

吉川慎二◎1962年、三重県出身。東京大学法学部、シカゴ大学ロースクールを修了後、SMBC、メリルリンチ日本証券を経て、投資家・経営コンサルタントとして独立。東京、軽井沢を生活のベースにワインのコレクションは5500本ほど。ワインエキスパートとして後進の指導にあたるほか、消費者目線のワインイベントも多数開催。
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文・編集=秋山 都 写真=ノザワヒロミチ、吉澤健太、松井康一郎、菅野裕二

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