土曜の昼、本屋でブルゴーニュワインを学ぶ「マニアックな贅沢」#1

マルサネ村のワイン

「ブルゴーニュのワインが好きなんだよね」と下戸の夫が言ったので驚いた。グラス1杯から提供してくれる店なのだという。「ブルゴーニュのワインは、優しい味がする」。1杯飲めば、なんとも幸せな気分になれるのだそうだ。その店に誰と通っているのかは聞くまい。

ワインをその国ではなく、地方で語れるようになりたい。長年のワイン素人の夢である。何冊も本を買っては挫折した。

土曜の昼間、下北沢の本屋でブルゴーニュワインを学べる講座が開かれると聞き、今度こそ、と取材に駆けつけた。 

ブルゴーニュワインの魅惑

講座は全18回。「世界のワイン全18回」でも「フランスワイン全18回」でもない。なんと、ブルゴーニュワインだけで18回も開かれるのだ。 

ブルゴーニュといっても、最北は白ワインで有名なシャブリ、最南はボジョレーと南北約300キロにもわたる細長い地方。その中でも、魅惑のワインを産む「コート・ドール」(黄金の丘)の28村を対象に、村々の特徴を学びながら、そこで産まれたワインをいただくのだという。受講料は18万円。なんともマニアック、かつ贅沢な講座だ。 

筆者のようなただの酒飲みでも、フランスワインにボルドーとブルゴーニュの二大生産地があることぐらいは知っている。やや怒り肩の形のボトルがボルドーで、なで肩のボトルがブルゴーニュ。様々な品種のブドウを用いて造るのがボルドーで、単一品種で造るのがブルゴーニュ。逆に言うと、その程度の知識しかなかった。おそるおそる参加した。

講師は東京・西麻布にある「スナックだるま」の店主、早坂渉さんだ。ソムリエの資格を持ち、毎年ソムリエ試験対策を行っている。早坂さんの対策を受けた受験者の合格率は8割を超えるのだという。



主催者は博報堂ケトルの代表取締役社長・共同CEOの嶋浩一郎さん。クリエイティブディレクター、編集者としても活躍する。今回の講座が開かれる本屋「B&B」の店主でもある。

数年前、世界的な広告祭「カンヌライオンズ」の審査員をつとめていた嶋さんに現地で取材をさせていただく機会があった。その際も、南仏プロヴァンス名産のロゼワインのグラスを傾けていた覚えがある。 「大好きなブルゴーニュのワインについて教えてほしい」と嶋さんが早坂さんに声を掛け、今回の講座が実現したという。

本屋の奥に着席スペース、そしてカウンターの向こうに早坂さん。開栓を待つワインボトル。やはりなで肩だ。

「ワインの王様」ブルゴーニュ、味わいは逆

参加者の自己紹介。実に多様なバックグラウンドを持つ6人が集まった。なんと、地方から朝一で新幹線に乗って駆けつけた参加者も。「テイスティングは朝10〜11時がいいと言われているんですよ。味覚が鋭いから」と早坂さん。鈍いルビー色の液体がグラスに注がれていく。

初回のテーマは「フランスワイン概論」。フランスの主なワインの産地とその位置関係、ボルドーとブルゴーニュの違い、主に使われるブドウ品種、ブルゴーニュワインの世界的な位置付けを学んだ。

ブルゴーニュの格付けは畑ごと、ボルドーはシャトーごとなのだという。格付けについては理解が難しいイメージがあったのだが、図解付きの説明がわかりやすい。「ブルゴーニュはワインの王様、ボルドーはワインの女王と言われますが、味わいは全く逆ですね」と早坂さん。
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文=林 亜季

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