しかし、懸命に働こうと思うがあまり、働き過ぎの状態に陥ってしまえば、非常に危険な結果をもたらしかねない。ロンドン大学シティ校カス・ビジネス・スクールが最近発表した論文では、働き過ぎると健康だけでなく、キャリアにも悪影響が出ることが示された。興味深いことに、鍵となる要素は仕事に費やす時間ではなく、仕事の激しさだという。
研究チームは、欧州36カ国の被雇用者約5万2000人を対象に、ストレスや疲労レベル、仕事の満足度、キャリアの展望、仕事での評価のレベル、全体的な仕事の安定性を調べた。
その結果得られた主な発見の一つとして、長時間働いたり集中的に働いたりして努力を重ねても、キャリアには良い成果が出なかったことが分かった。現実的にはその真逆で、データからはこうした勤務態度がキャリアの低下要因となっていたことが分かった。また、繰り返しこうした状況で働いていた人の健康レベルは低いことも示されている。
論文では「医師や政治家は、長時間労働や残業に対する懸念を強く抱いているが、それよりも喫緊の課題は仕事の激しさ(時間当たりの作業量など)かもしれないことが示唆された」と説明。
さらに、「職場で長時間過ごしたり、自分の職業の平均以上に働いたりして過度に仕事をしたとしても、キャリアに効果が出ないかもしれないことは注目に値する。キャリア向上を期待して健康を犠牲にすることは間違いかもしれない」と続けた。
過労との闘い
ノルウェーの研究者チームは数年前、仕事への依存度を測る「ベルゲン仕事依存スケール」と呼ばれるツールを開発した。このツールは、薬物依存の測定法から多くを流用し、気分の変化や許容度、顕著な特徴などの症状を分析するもので、チームはこれを使い職場依存を直接測定できる次の7項目を作った。
・もっと仕事をする時間をどう作れるかを考えている
・当初の予定よりも長い時間働いてしまう
・罪悪感や不安、無力さ、鬱のいずれか、あるいは複数を緩和するために働いている
・他者から労働時間を減らすよう言われたが、聞き入れなかった
・仕事を禁じられるとストレスを感じる
・仕事のために趣味や休日の活動、運動のいずれか、あるいは複数を犠牲にしている
・働き過ぎのため健康に悪影響が出ている
これらのうち、「よくある」「常にそうだ」と答える項目が4つ以上あった場合、仕事依存の可能性があるとされる。