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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

イラストレーション=山崎正夫

ビットコインに使われる分散型台帳テクノロジー「ブロックチェーン」。フィンテック系スタートアップにとどまらず、今やメガバンクや政府機関も積極活用する第2次デジタル時代の注目テクノロジーだ。

『ブロックチェーン・レボリューション─ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』の共著者でブロックチェーン研究所(カナダ・トロント)の共同創業者でもあるアレックス・タプスコットが、未来の企業・経営者のあるべき姿を語る。


──あなたは、著書のなかで「未来の企業を読み解く4つのモデル」として、スマートコントラクト、オープンネットワーク型企業(ONE)、自律エージェント、自律分散型企業(DAE)を挙げています。ブロックチェーン技術と、こうしたモデルとの関係について教えてください。

まず、指摘したいのが、工業化時代の企業は、すべてを社内で行っていたという点だ。通信費や業者との信頼構築といった取引コストが非常に高くついたからだ。しかし、インターネットの登場でオフショアアウトソーシングなどが容易になり、世界中にサプライチェーンを築くことが可能になった。

そして、今、われわれは次の段階に突入している。それは、分散型台帳テクノロジーであるブロックチェーンによって、契約や信頼を築くための取引コストが下がり、自律分散型企業、つまり、DAEという新組織が生まれつつあることだ。

DAEは、スマートコントラクトを通して緩やかに結びついた集合体だ。企業としての機能も数多く備えているが、従来と違うのは、ヒエラルキーに基づいた垂直統合型企業ではなく、オープンネットワーク型であることだ。

スマートコントラクトとは、家主に家賃を払うことで賃貸住宅に住めるなど、当事者間での合意を指す。それに、(プログラム化された指示に合わせて自ら行動するソフトウェア)自律エージェントを組み合わせ、契約を自動化することで、DAEが誕生するというわけだ。

ブロックチェーンで取引コストが下がり、自由市場での契約が容易になれば、効率性も生産性も高まる。将来はDAE系組織が主流になり、オープンネットワーク型という、新ビジネスモデルが生まれるだろう。

ブロックチェーンは第2次デジタル時代の礎となるものだ。企業の本質を大きく変える最も重要なテクノロジーは、ブロックチェーンと人工知能(AI)だ。イノベーションの速度が加速するなか、企業には、もう過去の栄光に甘んじている暇などない。自らを「破壊」する必要がある。

「分散型」時代の新しいリーダーとは

──30年後の「働く」という概念は、どのように変わっているでしょうか? 未来の「理想的なリーダー」像とは?

「働く」という概念が大きく変わる。多くの人々は、もはや従来の意味での仕事には就いていないだろう。企業の基本構造が様変わりするからだ。テクノロジーの台頭で、より自立した働き方をする人が増える。契約のあり方も組織のあり方も、企業色が薄れ、ネットワークという色合いが強まる。だが、企業構造もリーダーシップもない無秩序状態とは違う。もっと「分散型」になるということだ。

未来のリーダーは、自分のゴールを把握し、指揮や管理よりも、分散的に集まった多くの人たちとともに、同じ目標に向かって協調していくことが大切だ。

今日、良きリーダーたちが行っていることの多くは、将来も通用するだろう。人からの称賛を共有し、時には責めを負って責任を取る。謙虚さと勤勉さを併せ持ち、取引や決定において、卓越性を追求する精神を持ち続けるべきだ。

そして、未来のリーダーは、ブロックチェーンやAIなどに精通する必要がある。リーダーだけではなく、組織内の誰もがテクノロジーに通じているべきだ。DAEにせよ従来の企業にせよ、テクノロジーが組織にとって、どのように機能するのか、なぜ重要なのかを理解しなければならない。

つまり、未来の理想的リーダー像には3つの柱がある。まず、ネットワーク型の協働。そして、常に卓越性の精神で、あらゆるものを追求すること。3つ目が、業界や経済を変容させているテクノロジーについて、深い知識を持つことだ。

──あなたは著書のなかで、ブロックチェーン技術により、世界はオープンで豊かになり、分散的で、真にグローバルな時代に突入すると述べています。しばらくは不安定に揺れ動き、想定外の事態も出てくる、と。そうした時代において、「未来に選ばれる企業の条件」とは?

まず、規模の大きさは、スピードほど重要ではなくなる。内側から自らを「破壊」する能力、そして、新たな機会を生かすために、「聖域」とされてきたものを断念する能力が必要だ。

未来の企業は、より分散的で、ネットワーク的性格や開放性が増し、イノベーティブなものになる。今日の企業は、いわば大交響楽団に似ているが、未来の企業はジャズバンドのようなものになる。

現在の企業では、社員一人一人が脚本に沿って特定の役割をこなしているが、未来の企業には経歴も働くスタイルも千差万別の人々が集まり、学び合い、絶えず旋律を変えながらイノベーションを起こし、音楽を奏で合う。交響楽というよりもジャズに近い。

編集=フォーブス ジャパン編集部 インタビュー=肥田美佐子

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