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シネマの女は最後に微笑む

映画『ウィンターズ・ボーン』で主演を務めたジェニファー・ローレンス(WireImage)

先月25日、メキシコ側から国境の壁を越えようとした中南米からの移民「キャラバン」のグループと、米国境警備当局が衝突した。トランプ大統領は彼らの入国を許さないとしており、移民に対応する国際的な初の枠組み「国連移民協定」も拒否している。

世界的な移民増大の原因は、先進国とその他の貧しい国々との経済格差の拡大にあるが、アメリカにおいても移民後の人々の間にさまざまな格差は生じてきた。「ヒルビリー(Hillbilly)」と呼ばれる貧困白人層もそれに当たる。

ヒルビリーはもともと、18世紀にイングランド系移民より遅れて移ってきたスコッチ・アイリッシュの人々で、アパラチア山脈の南側一帯やオザーク山脈の高原に住み着き、独特の文化風習を守る閉鎖的な共同体を作ってきたという。

「山に住む白人」という意味から、ヒルビリーはやがて「田舎者」という蔑称に転じ、発展から置き去りにされたプアホワイトを指す言葉となった。2年前、トランプが大統領に当選した時、支持層としてクローズアップされたのが彼らである。

今回紹介するのは、そのヒルビリーを描いた『ウィンターズ・ボーン』(デブラ・グラニク監督、2010)。サンダンス映画祭のドラマ部門でグランプリを獲得した他、第83回アカデミー賞に複数の部門でノミネートされ、主演をつとめたジェニファー・ローレンスがブレイクするきっかけとなったサスペンス作品だ。

みな、覚せい剤密造に関わっている

舞台はアメリカ中西部ミズーリ州のオザーク高原。岩や石の多い山腹が広がり、農作物を作りにくい痩せた土地に、スコッチ・アイリッシュ系移民の子孫たちが村社会を形成している。

17歳のリー(ジェニファー・ローレンス)も貧しいヒルビリーの一人。母親は過酷な環境に精神を病んでおり、彼女一人で幼い弟と妹の面倒をみて暮らしている。

ある日、保安官がやってきて、覚せい剤密造容疑で捕まり保釈中のリーの父親が行方不明であると告げる。父が裁判に出なければ、担保となっている家も土地も取り上げられてしまうことを知ったリーは、友人や親戚関係を回って父の居所を尋ねるが、彼らはことごとく口を閉ざし「嗅ぎ回るな」と警告する。

どうしても家族を守らねばならないリーは、最後に怖れられているヒルビリーのボス、サンプ・ミルトンの家まででかけていくが、面会が叶わず追い払われる。

皆、もともと身内なのに、なぜこんなに冷たいのだろう? 貧しい土地で収入源の少ないヒルビリーの男たちは、多かれ少なかれ酒や覚せい剤の密造に関わっていることも、リーは薄々知っている。

父の従兄弟が突然訪問し、覚せい剤製造小屋の焼け跡にリーを連れていくが、それは爆発が起きて父が焼死したと彼女に思わせるための嘘だと、リーは見抜く。さらに、一時期父の恋人だった女を探し当てて尋ねると、保釈中にトラブルに巻き込まれていたらしいことがわかり、最悪の予感を漂わせつつ、謎は深まっていく。

文=大野 左紀子

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