what3wordsは導入もシンプルだ。無料アプリをダウンロードすれば、誰でも3ワードレスの地図を使うことができる。企業や行政機関は、同社のB2Bサービスを利用することで、わずか数行のコーディングを加えるだけで、自社のアプリやホームページに取り込むことができる。
同社のプレスリリースによると、現在、170カ国、自動車、Eコマース、物流、交通、旅行、郵便、緊急支援といった多岐にわたる業界の1000を超える企業や団体が、3ワードレスを導入している。
例えば、自動車業界では、メルセデスベンツやランドローバーがパートナー企業として提携している。メルセデスベンツは、what3wordsを自社のカーナビシステムに導入した最初の事例だ。
3ワードレスは、従来の住所システムの課題が多い音声入力に適している。一般的に住所は通り名と番地で指定することが多いが、同じ都市内でも同じ路地が複数存在するケースがある。例えば、ロンドンにはChurch Road(チャーチ通り)が14も存在する。しかし3ワードレスを使えば、同じ通り名に惑わされることなく、正確な目的地に到着することができる。
エアビーと提携した「デジタルノマド」旅
同社は、今年11月にエアビーアンドビーとのユニークな提携を発表した。それは、モンゴルに暮らす遊牧民の“移動型住居”に泊まることを可能にするものだ。
ホストとなる遊牧民は、まさにノマド的なスタイルで、ある地域内で定期的に移動しながら生活しているが、ゲストは予約後、最新の3ワードレスを取得することで滞在することができる。
モンゴルは、2016年から、郵便システムにwhat3wordsを導入しており、銀行、タクシー、ピザ宅配業者などが3ワードレスを使っている。日本を含む世界各国でエアビーのような民泊サービスに対して、行政機関の規制がかかる動きがあるが、モンゴルはむしろ活用して、より多くの観光客の誘致を促進しようとしている。
同社は、民泊サービスの活用でモンゴルの地域活性化を促すといった趣旨で、今年モンゴルの自然環境観光省と基本合意書も締結している。
今回のwhat3wordsは、こうした連携をさらに加速させるサービスとなる。現在、what3wordsとエアビーの連携は、モンゴルに限定されているが、今後他国に展開される可能性は十分に考えられる。
既存の住所システムの不完全さと、正確なGPSシステムの複雑さの問題を、第三のやり方で同時に解決したシェルドリックの発想。スタートアップの世界では、いかにmarket void(市場のすきま)に機会を見出すかが一つの成功の鍵となるが、まさにwhat3wordsは、位置情報の世界におけるvoidを見出した革新的なサービスだ。
今回のソニーの出資やエアビーとの連携の先にある、what3wordsのさらなる飛躍に期待したい。
連載 : 旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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