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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」

LOUVRE ABU DHABI’Sの外観 (c)Louvre Abu Dhabi, Photography: Mohamed Somji

いままでの人生で見てきた世界各国の美術館のなかで、最も印象に残る1つが、アラブ首長国連邦(UAE)のサディヤット島(アラビア語で「幸せの島」の意)にあるルーブル・アブダビだ。

筆者が、「ルーブル・アブダビ」プロジェクトの存在を知ったのは、2010年のW杯南アフリカ大会観戦に向かう途中でこの地に立ち寄ったときだった。当時、これほど頻繁にアフリカ大陸や欧州を訪問することになるとは、自分自身で予測していなかったが、今年、再び旅の途中でアブダビを経由する機会に恵まれ、同美術館を訪れることになった。

「ルーブル」の名に4億ユーロ

一部メディアの記事では、パリのルーブル美術館の別館と呼んでいたりもするが、ルーブル・アブダビは、フランス国内ランスに存在する地方別館とは異なる、UAEとフランス両国が協働した国家プロジェクトだ。

2014年にルーブル美術館がプレス向けに公表したデータによれば、ルーブル・アブダビは、10年間、毎年平均4000万ユーロ(約50億円)の予算をかけて、作品の買収を行うとしている。しかも、UAEからフランスに対する支払い総額は約10億ユーロ(約1300億円)にのぼるとのことだ。

フランスに対する支払いの内訳で最も高額なのが、30年間「ルーブル」の名を冠する対価としての4億ユーロ(約530億円)。次が、10年間にわたるフランスの各美術館からの作品の借用料で約2億ユーロ。そして、2007年7月にUAEとフランス政府間の合意のもとで設立された「アジャンス・フランス・ミュゼウム(AFM: Agence France-Muséums)」に対する、2026年までの20年間分の支払いが約1.6億ユーロだ。




AFMはルーブル美術館のほか、現代美術で名高いポンピドゥー・センター、印象派作品で知られるオルセー美術館、アフリカなど非西欧社会に焦点を当てたケ・ブランリー美術館などを含む13の美術館を傘下に持ち、ルーブル・アブダビに対する継続的なアドバイザリー業務、傘下美術館からの作品のローンの手配のほか、ルーブル・アブダビのスタッフに対する研修も実施する。

異なる地域の作品を並立的に展示

ルーブル・アブダビは、「ユニバーサル美術館」というコンセプトを打ち出している。美術館の説明によれば、「ユニバーサル」の意味するところは、「個々の文化や文明、そして時空を超えたところにある人類の創造性の物語、つまり我々を団結させるもの」に焦点を当てるということだという。

汐留の電通本社ビルなども手がけたフランス人建築家、ジャン・ヌーヴェルが設計したこの美術館は、エメラルドブルーの海に囲まれた、10万平方メートルの場所に浮かぶ。計55塔の白い建物を覆う網目状のドーム自体が実に特徴的だ。

ステンレススチールの構造とアルミニウムの層で構成されたドームは、パリのエッフェル塔よりも200トン重い、7500トンの重さがある。ドームの網目により、アブダビの強い日差しが巧みに遮られ、木洩れ陽のような光が差し込む。



ドームの下に広がる神秘的で開放的な中庭の左右に展示室があり、片側が常設展、もう一方が期間限定で入れ替わる特別展示用のスペースとなっている。建築自体は壮大だが、パリのルーブル美術館とは比較にならないほど常設展の展示品数は限られている。

文・写真=MAKI NAKATA

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