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2018.07.21 11:30

アブダビに浮かぶ「もう一つのルーブル美術館」にみる中東都市戦略

LOUVRE ABU DHABI’Sの外観 (c)Louvre Abu Dhabi, Photography: Mohamed Somji


常設展は12の展示室に分かれ、それぞれが人類の歩みにおける1章ずつとして構成されている。地理的、民族的な分類、あるいは彫刻や絵画といったメディアごとの分類はされておらず、彫刻、道具、壺など、異なる国や地域からの類似作品が、時代ごと、もしくはテーマごとに並立的に展示されているのが印象的だ。
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例えば、大玄関(The Great Vestibule)と名のついた第1ギャラリーには、14世紀フランスの「キリストを抱くマリア像」、紀元前8世紀~紀元前4世紀エジプトの「息子のホルスに乳を与えるエジプトの女神イシス」、19世紀~20世紀コンゴ共和国の「母子像フェンバ」が並立して展示されている。床には、世界各都市の地名が各言語でランダムに散りばめられた川のような筋模様が広がる。



最後の第12ギャラリーは、グローバルステージという名がついており、中国出身の世界的芸術家アイ・ウェイウェイの「光の泉」が美しい光を放つ。
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ソフトパワー強化戦略の今後はいかに

前述のAFMとともに、ルーブル・アブダビを主導するのがアブダビ観光・文化庁(TCA)で、アブダビにさらなる観光客と投資を呼び込むという役割が課されている。

2007年にルーブル・アブダビのプロジェクトが発足した際は、フランス文化関係者から、他国に自国の文化遺産を売り渡す行為だとする反対意見もあった。しかし、アブダビにとっては、これまでUAEやアブダビに関心がなかった観光客を呼び込むため、「ルーブル」とフランス文化のブランド力を借りたことは、とても有効な戦略だったといえる。

アブダビにUAEの国立美術館が開館するというだけでは、ここまでメディアや業界関係者、そして美術愛好家らの興味をそそることはなかったかもしれない。年間800万人強という世界一の訪問者数を誇る、世界で最も有名な「ルーブル」という名前があってこそ、これだけの注目を集めたのだ。

TCAは同時に、大英博物館との協働プロジェクトであるザイード国立博物館(Zayed National Museum)や、グッゲンハイム・アブダビも手がけている。どちらもサディヤット島にて開館が予定されているが、プロジェクトは停滞しており、現時点で開館日などは未定だ。

アブダビ空港から、海沿いの高速道路を30分ほど走ったところにあるサディヤット島には、ニューヨーク州立大学のアブダビ校も開設されているが、まだ全体としては開発途中といった状況である。

これらグローバルブランドとの協業プロジェクトを進め、果たしてアブダビは海外からの訪問客を増やすことができるのだろうか。少なくともルーブル・アブダビに限って言えば、世界の旅行者が憧れるデスティネーションとしての要素を持っていると思う。9月には世界一高値の絵画として4.5億ドル(約500億円)で買収されたレオナルド・ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」も公開される予定だ。

アートが牽引するUAEサディヤット島のグローバル化戦略の成功だけでなく、アラブ世界全体のソフトパワーの強化にも、引き続き期待したい。

連載 : 旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
過去記事はこちら>>

文・写真=MAKI NAKATA

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