「Well-Being」は身体や精神、社会的に健康な状態なことを示し、「幸福」と訳されることも多い言葉。人生100年時代に欠かせない、GDPに代わる豊かさの指標としても注目されている。
ライフルは不動産情報サイト「ライフルホームズ」を運営する一方で、利他主義をベースに地方創生や介護事業にも取り組む企業。代表取締役社長の井上高志が石川と幸せについて話すうちに、財団の設立を決定した。
LIFULL財団には、ドミニク・チェン(早稲田大学准教授・情報学研究者)、北川拓也(楽天CDO)らが理事として、孫 泰蔵(Mistletoe創業者)や小林正忠(楽天 CPO)らが評議員として参加。
まずは公益財団としての認可を得て、将来的には未来の産業を生み出す先駆者を生み出す集団になることを目指す。アクションプランとしては、Well-Beingを再定義し、より正確な測定技術を開発。リアルタイム計測を実現し、最終的により多くの人が「健康」になる社会を実現していくという。
「ロックフェラー財団は予防医学を学問として確立し、さらに産業にしました。だからいまでは多くの人が予防を大事な文化だと考えるようになりました。私たちの財団では、それをWell-Beingでやりたいんです」(石川)
そもそもWell-Beingとは?
そもそもWell-Beingとは何か? 実はその正確な定義は示されていない。身体や精神的に健康な状態ではあるが、「病気がないことと、『健康』であることは違いますよね。では、健康とは何なのでしょうか?」と石川は問いかける。
最新のWell-Beingは、「ジャッジメント」と「エクスペリエンス」をベースに測定される。ジャッジメントは、「梯子の一番高い位置を10点としたときに、いまあなたの人生はどれくらいか」という質問への自己評価の点数。
エクスペリエンスはさらにポジティブ体験とネガティブ体験に分かれ、それぞれよく眠れたか、笑ったか、体の痛み、ストレスなどに対する評価によって算出される。
これまでの調査では、ポジティブ体験の数値が高いのはラテンアメリカ、ネガティブ体験の数値が低いのは東アジア、エクスペリエンスの数値が高いのは西洋だという。
しかし、石川によればこの定義は不正確だ。「梯子の高い位置にいるほど良いというのは、ギリシア哲学に端を発するとても西洋的なイメージです。日本では振り子がバランスよく揺れる方がイメージに近いかもしれない」
Well-Being、ひいては私たちがよく口にする「健康」や「豊かさ」の定義は、簡単には見つかりそうにもない。例えば、日本では1958年を100とした生活満足度が計測されているが、GDPは右肩上がりなのに対してWell-Beingはほとんど変化がなく、両者のギャップはどんどん高まっているという。
つまり、経済的な豊かさは人々の豊かさの実感には結びつかないということだ。この調査結果は世界の研究者に衝撃を与えたと石川はいう。