ビジネス

2018.11.27 12:00

「共感」を起点に スマートニュースが目指す次世代ジャーナリズム

浜本階生(左)、鈴木健(右)

スマートニュースは2012年のリリース以来、3500万ダウンロードを記録するなど大きな成長を遂げた。「理想を語る知識人」「貪欲に技術を開発するエンジニア」創業者タッグが見据えるその先とは。


スマートニュースは浜本階生と鈴木健、2人の夢から始まった。「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」。アルゴリズムによってインターネットに点在する重要なニュースが選ばれユーザーに届くアプリの登場は革新的だった。

浜本には開発する技術があった。はてなブログ、ブックマークで知られるインターネット企業「はてな」に憧れ、はてなコミュニティで自身を成長させた。現在のスマートニュースの原型となる技術を開発したのは浜本だ。

鈴木にはビジョンがあった。インターネットによる社会変革の可能性を構想した情報社会論『なめらかな社会とその敵』は研究者だけでなく、ネット業界でも話題になった。

2人はタッグを組み、夢を形にした。多くのスマホユーザーは彼らの夢を歓迎し、ダウンロード数は数多登場したニュースアプリの追随を許さず国内トップの3500万ダウンロードを誇り、そしてアメリカ進出も果たした。

テレビをつければお笑い芸人を起用したCMが流れ、新しく投入されたクーポン機能を盛んに宣伝している。英語版も堅調で、アプリ内の広告枠も埋まっている。事業が非常に堅調な成果を上げていることはこの事実からわかる。だが、ここで問いたいのは「2人の夢はこの程度だったのか」ということだ。

「発見」「バランス」「共感」

「インターネットの現状を振り子に例えると、マイナスに振れていると思っている。20年前はプラス、つまりインターネットで社会が良くなるという『未来』に振れていた。そこからは明らかに後退している」

そう語る鈴木は研究者時代、300年後の社会システムを構想し、インターネットのプラス面を高らかに語る論客だった。インターネットが新たな社会のコアシステムを生み出すことができれば、国家がインターネットを飲み込むことはない。彼が当時語っていた理想から、インターネットは明らかにマイナスイメージが強まっている。

「僕たちが思っていたよりも早くインターネットが普及し、ネット上で同じ意見ばかり集めるエコーチェンバー(共鳴箱効果)は問題になり16年のアメリカ大統領選につながった。そして、世界ではインターネットの分断化が進んでいる。もはやひとつのインターネットという概念すら、国家によって阻まれようとしている。マイナスをゼロに戻すだけでもかなり大変ですが、やらないといけないでしょう」
 
インターネットは世界をつなぐ一つのグローバルヴィレッジを作るどころか、多くの分断を生み出した「民主主義の敵」となりつつある。
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文=石戸諭 写真=西澤崇

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