とはいえ、えりすぐりの記憶力改善法には信頼できる科学的根拠が豊富にある。次の5つの記憶力改善法は、長期・短期記憶の両方を改善するものだ。
1. 運動をする
最近の研究では、運動により記憶が向上することが証明されている。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された脳画像を用いた新調査からは、軽い運動を数分するだけでも即座に記憶の改善が見られる可能性があることが分かった。研究者らは、被験者に軽い運動を10分間行わせた後、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って被験者の脳活動の変化を測定し、記憶力テストも実施した。
fMRIの結果からは、新しい一時的な記憶を蓄積する活動に関わる脳の2つの部分(歯状回と海馬)のつながりの向上が示されており、記憶テストの結果は脳画像の結果と相関していた。
同調査は小規模なものなので、検証を重ねるためさらなる調査が必要だが、同調査結果は、数分から1時間までの運動をすることで記憶力の向上に関わる脳領域のつながりが向上するという先行研究と合致する。運動は、ランニングマシンやウォーキングなど軽いものでよいため、ほとんどの人が挑戦できる。
2. 睡眠を十分に取り、昼寝をする
記憶の定着は眠っているときに起きるため、眠りの質が記憶力の向上と相関するのも理にかなっていることだ。良質な睡眠が取れず夜中に何度も起きてしまうようであれば、記憶力が下がっていることに気付く可能性が高いだろう。逆に毎日8時間以上の睡眠を取っている場合、新たな記憶を定着させ情報を思い出す能力は(その他の条件が変わらない限り)高まるはずだ。
研究からは、戦略的に昼寝を活用すれば記憶力が向上することが示されている。米科学誌ネイチャー・レビューズ・ニューロサイエンス(Nature Reviews Neuroscience)に掲載された研究では、30分ほどの短時間の昼寝をすることで脳の情報保持能力が高まることが示された。
研究者らは2つのグループにさまざまな画像が載った一連のカードを記憶させ、40分後に追加のカードを覚えさせた。その合間に1つのグループは短時間の昼寝を取ったが、もう一方は起きていた。結果、昼寝したグループは最初に見た画像の85%を覚えていたが、昼寝なしのグループが覚えていたのは60%ほどだった。