英エクセター大学などが行った研究の結果、飲酒は忘れることではなく、前日のことをより明確に記憶させていたことが分かったという。
研究チームは付き合い程度の飲酒をするおよそ90人にいくつかの言葉を覚えてもらった後、ランダムに2つのグループに分類。一方には2時間にわたって好きなだけ飲酒してもらい、もう一方にはこの間、アルコール含まない飲料を提供した。
その後、覚えた言葉をどれだけ記憶しているかテストを実施。翌朝にもまた同様のテストを行った。その結果、翌朝のテストでは飲酒したグループの方が、前日に覚えたことをより多く記憶していた。さらに、最もテストの成績が良かったのは、最もアルコール摂取量が多かった人たちだった。
この調査で明らかになったのは、記憶に対する飲酒の影響が一定の時間が経過した後になって現れたということだ。飲酒直後のテストでは、酒を飲んでいた人たちの成績は翌朝のテストよりも悪かった。覚えた言葉はアルコールが体内で処理された何時間かのうちに、確実な記憶に変化したのだと見られる。
これがどのような変化であるか、明確に説明することは難しい。だが、研究者らはこの結果から、アルコールは私たちが新しい情報を学習する機能を妨害し、そのため脳は飲酒から数時間が経過し、アルコールの影響がなくなってから、新たに得た情報の整理統合を始めたのではないかと考えている。
論文をまとめた研究者の一人は、「(記憶に関して非常に重要な役割を果たす部位である)海馬は、まず記憶を整理し、その後に短期記憶と長期記憶を分類している」とされる点を指摘している。
飲酒が学習を促進するという研究結果が示されたのは、これが初めてではない。だが、実験室の外で実施された調査で、こうした結果が示されたのは初めてのことだ。
新たな研究結果は当然ながら、大量の飲酒を推奨するものではない。飲酒と関連した否定的な研究結果のリストは、肯定的な結果をあまりにも大きく上回る。この結果はむしろ、多量のアルコール摂取について改めて考え直すべきであることを示しており、その点で興味深い。
飲酒した翌朝になれば、前日のことをより明確に思い出せるかもしれない。だが、それはつまり、脳は飲酒しているとき、そしてその後の数時間、学習機能を「凍り付かせている」ということなのだ。