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ブラジルに学ぶ「幸福」をつくる教育 

Alf Ribeiro / Shutterstock.com

ブラジル北東部レシフェにある公立高校「Escola de Referência Ginásio Pernambucano」。高校1年生35人の授業に参加した。

授業開始時に、担任の先生から「日本からやってきたセニョール・イナダです」と紹介を受け、簡単な自己紹介を終えた。授業時間は50分、さてどんな授業が繰り広げられるのかと期待に胸を膨らませながら端の方の席に座ろうとすると、突如生徒から質問が飛んできた。

「イナーダ、日本人からすると、この中の誰がかわいいと思う?」

日本だったらまず出てこないような質問にたじろいでいると、立て続けに質問があがる。

「イナーダ、ブラジルではマリファナに手を出してしまう学生が増えていることが問題になっているんだけど、日本の学生はどう?」

「イナーダ、日本の国技は相撲と聞いたけど、ブラジル人にとってのサッカープレイヤーのように、相撲プレイヤーに憧れる人が多いの? でもどうして日本人は痩せている人が多いの?」

「イナーダ、日本人はどんな宗教が多いの?」

どこまで思うように答えていいのだろうか、担任の先生の方を見ると、自由にお答えくださいといった表情で微笑んでいる。生徒たちの凄まじい勢いに圧倒されながら、筆者のたどたどしいポルトガル語で回答する。何度か、生徒たちのポルトガル語が聞き取れないこともあったが、そんなことは関係ない。日本のアニメ、音楽、食事、スポーツ、恋愛、宗教、麻薬、同性愛、犯罪などについて各自が怒涛の勢いで質問してくる。

先生から質問しなさいと言われているわけではなく、日本から来た珍しいゲストについて知りたくてしょうがないといった感じだ。先生も質問を制御することなく、生徒の自主性に任せている。

日本の高校に、外国からゲストが来たらどうなるだろう。授業開始時に簡単な自己紹介をして終わり、すぐにいつも通りの授業が始まるだろう。

結局、50分の授業は筆者への質問で終わってしまった。

授業後に、「授業をやらなくてよかったのですか? 邪魔してしまったようで、すいません」と担任の先生に謝ると、「何を言っているの? 今日は貴重な機会をありがとう! 異なる文化の人と会話する貴重な機会でしょ。普段の授業からは学べないものを学ばせてもらって、とても感謝しています」と返ってきた。

翌週、同じクラスに参加した。教室に入るや否や、授業開始前から再び質問ラッシュだ。そして、なんと50分の授業はまたしても著者への質問で終わってしまった。さらに翌週、まだまだ質問が止まらない。さすがに3回目の授業では、2つ3つ質問が終わったところで、先生が「そろそろ、通常の授業に戻りましょう」と制御した。

先生が止めるまで、質問が出続けることにも、先生が通常の授業を中断して合計2時間近くの質問時間を許容したことにも衝撃を受けた。

仕事でブラジル人と会議をする際に、「何か質問ある人?」と問うと皆が手を挙げる。日本でよく見られる、質問があってもその場では発言せずに会議後にこっそりと質問するといった光景は、ブラジルではまず見られない。ブラジル人の質問力は、学生時代から鍛え続けているのかもしれない。

文=稲田 大輔

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