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2018.11.01

評価額20億ドルのHRテック企業、Gustoが大事にする人間らしさ

Rawpixel.com / shutterstock.com

中小企業向けにHR(ヒューマンリソース)サービスを提供する「Gusto」が、フォーブスがクラウド分野の非公開優良企業を選出する「クラウド100(Cloud 100)」に3年連続でランクインした。HRテックの分野では様々な企業がしのぎを削るが、Gustoの好調ぶりを支えているのは、「共感」の心だ。

同社は創業わずか6年目にして、6万社以上のクライアントを持ち、評価額は20億ドル(約2240億円)。経理、福利厚生、採用などを一括で管理できるプラットフォームを提供する。ジョシュ・リーヴスCEOは創業の動機について、企業のヒューマンリソースのワークフローに欠けているhuman(人間性)を取り戻したかったと語る。

「“人材開発管理(human development management)”といった言葉にも寒気がする。人間は資本ではない。きちんと人間にフォーカスしたサービスを作りたかった」

人事や労務の分野は、往往にして華やかな技術革新から切り離されてきた。リーヴスと共同創業者のエドワード・キム、トマー・ロンドンの3人はそれぞれ、IT化が遅れている小規模ビジネスで働く親戚から、職場の人事業務の効率の悪さを聞かされていたという。

身内を助けることが、大きなビジネスチャンスになりうると彼らは感じた。「(それらの企業の事務作業が)いかに手間がかかっているかを知り、やる気が湧いた」とリーヴスは振り返る。

3人には高いITスキルと起業の経験があった。リーヴスはそれまでフェイスブックのアプリ開発に従事し、高収入を得ていたが、仕事は不安定で目的も見出せなかった。キムは画像共有サービス「Picwing」を起業し、2011年に売却。ロンドンはカスタマーサポートの「Vizmo」を創業した経験を持つ。

Gustoが自動化するタスクの一つは、給与税の申告だ。「アメリカでは毎年、40%の企業が給与税に関する書類上のミスを理由に、政府から罰金を取られている」とリーヴスは明かす。Gustoを使えば、企業の給与担当者は政府の書式を目にする必要すらない。

現在、Gustoはサンフランシスコとデンバーに拠点を構え、600人以上の従業員を抱える。一方で、Gustoを導入している米国のビジネスはまだ1%あまり。人事労務サービス最大手のADPが持つシェアの約10分の1だ。リーヴスらは事業を拡大するため、今年の夏に1億4000万ドル(157億円)を資金調達した。その資金で大々的な海外進出を目指す。同時に、給与の前払いなどを可能にするフレキシブルな給与支払システムの試験運用をテキサス州で始めた。

非公開企業であり続ける限り、Gustoは今後もクラウド100の常連であり続けるだろう。リーヴスは言う。「(困っている人々に対して)『問題はここ、原因はこれ。こうすれば解決できる』と示すことが我々の方針だ」

編集=海田恭子

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