日本語にすると「同調性」。とくに集団行動を重んじる文化である日本の社会では、個人に同調を求める強い社会的圧力(同調圧力)があることは、欧米の研究者たちからも指摘されています。日本人として日本で暮らすなかで、友人とのやりとりや組織や社会全体のなかで、この同調圧力を日常的に感じている方も多いのではないでしょうか。
私が学ぶミネルバ大学大学院では、このコンフォーミティを、「人をBad Choice(悪い選択)に陥いれてしまう、グローバルに共通する無視できないコンセプト」のひとつとして捉えています。授業では、コンフォーミティの行動パターンの種類、コンフォーミティを持ち込むと悪く作用する状況などを学びました。
2つのコンフォーミティ
コンフォーミティには、大きく分けて2つの種類があります。「情報感化(Information Influence)」と「社会的規範感化(Normative Social Influence)」です。
「情報感化」は、情報をグループの誰かから入手し、その情報を正しいと思い込んでしまうときに起こります。問題が困難で曖昧な状況のときほど、人は無意識のうちに焦りや恐怖感を覚えてしまい、そのネガティブな感情を、他人に頼ることで解消しようとしてしまいます。
知識が豊富な人ほど、リソース元として信頼できるだろうということで、専門家に頼ろうとすることも、この人間本来のコンフォーミティに由来します。しかし、専門家でも間違っていることもあります。「情報感化」は一旦情報を入手したら、この情報は本当に正しいのだと自分の中で思い込んでしまうのでやっかいです。
一方、「社会的規範感化」は、グループの中のメンバーたちに好かれたい、受け入れられたいと多数派意見に従うときに起こります。社会的受容や承認欲求は人間本来がもっている欲求でもあります。
グループの中で多数派意見に従わず、異色を放つ人は好かれず、ましてや罰せられることもあるということから、たとえ自分が信じていないことでも信じていると言ってしまう。「情報感化」とはやや異なり、自分の中では違う回答を持っているけれども、公共の場で意見を表明するときに多数派に合わせてしまうというものです。
この2つのコンフォーミティは、人間本来の欲求であるがゆえ、組織で活動するうえで、完全に避けるのは難しいでしょう。とくに、グループのメンバーの人数が多ければ多いほど、問題の難易度が高ければ高いほど(メンバーの基礎知識が乏しいほど)、所属グループが個人にとって重要であればあるほど、コンフォーミティの行動パターンを取る頻度が増えると言われています。
今後ますます社会の不確実性が増し、明確な答えが存在しないという状況のなか、重要な意思決定の場面でコンフォーミティに流れてしまい、Bad Choiceをしてしまうリスクは甚大です。