この動きは、プロのアメリカンフットボールも同様で、サンディエゴ郊外の静かな地域に本拠地を置いていたチャージャーズは、去年から集客を求めてロサンゼルスへと引っ越してしまったし、ロサンゼルス・ラムズなどは、ロサンゼルスからセントルイスに引っ越し、20年の後にまたロサンゼルスに戻ってくるというありさまだ。
そのたびに地元の財政出動があって大議論になり、ファンのブーイングがあり、しかし、最終的には本拠地周辺のエンタメ集客力が議論の決着をつけることになる。
移転しないという最強の戦略
翻って東京ドームは、前身の後楽園球場が昭和12年に開場したのち、その18年後に後楽園ゆうえんちを開園する。東京ドームとなってからは、高層ホテルやコンサートホールも併設し、従来からの遊園地やボクシングの殿堂である後楽園ホールとともに、都会のど真ん中に一大集客空間を築いている。
もちろん、飲食施設も充実していて、JRや地下鉄の駅が隣接していて便利そのもの。江戸初期の大名庭園である小石川後楽園も歩いてすぐの場所にある。これだけのエンタメ総合力は、メジャーリーグの球場といえども遠く及ばない。それどころか、巨人軍はこの場所からずっと動かず、ファンにも不便を与えていないというのがすごい。言うならば、これほど戦略的な球場はないのだ。
とはいえ、その東京ドームもすでに開場30年。ファンには見えていないところでさまざまな構造上の経年劣化も抱えているはずだ。収容人数4万6000人というのも、日本を代表する球場としては、正直小さすぎる(ヤンキースタジアムは5万4000人、ドジャースタジアムは5万6000人)。しかし、もう東京ドーム周辺には空地がない。後楽園球場から移行したときのように、隣につくるというわけにもいかない。
もし、東京の郊外に、周辺の再開発と抱き合わせ、新球場開発をするとなると、アトランタと同様のことが起きないだろうか? それは、球団に引っ越されてしまったほうの周辺経済は低落することになるという事実だ。そしてもし、同じ都内に移転したとして……本拠地が東京ドームではない巨人軍は、ファンにとって同じ巨人軍であり続けるだろうか?
連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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