地中海食がうつのリスクを軽減? 新たな調査結果で明らかに

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地中海式の食生活が、体の健康と長寿のためには最善の選択肢であることについては議論の余地がない。しかし、それに加え、地中海式の食事は体だけでなく脳、そして心にも良い効果をもたらすことを示す証拠が多く報告されている。

ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の科学誌、モラキュラー・サイカイアトリー(Molecular Psychiatry)に掲載された新たな調査からは、地中海式の食事がうつ病のリスクを顕著に下げることが分かった。地中海食のうつ抑制効果に言及した調査はこれが初めてではないものの、同調査は現時点で最大のメタ分析だ。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(ULC)の研究者から成るチームは、食事法とうつ病のリスクのつながりを分析した先行研究40件以上を分析。食事の分析手法としては、ダッシュ(DASH)ダイエットスコアや食事炎症指数(DII)など、さまざまな基準が使用されていた。このうち4つは、地中海式の食事とうつ病のリスクに焦点を当てた長期的な調査だった。研究者チームは、年齢や性別、喫煙の有無、身体的運動レベル、収入、体のサイズ、全般的な健康レベルなど、交絡変数となり得る要素を考慮している研究のみを分析対象とした。

その結果、健康的な地中海式の食事を採用することとうつ病のリスクの減少には強いつながりがあることが分かった。

論文の著者であるカミル・ラサールは、学術ニュースサイト、ザ・カンバセーション(The Conversation)に対し「私たちは、より地中海式に近い食事を取る人の方が、地中海式の食事から最もかけ離れた食事を取る人に比べ、うつ病を発症する可能性が33%低いことを発見した」と述べた。

このデータは、地中海式に最も沿った食事習慣を持つ人と、地中海式の食事を取る回数が最も少ない人を比べたものだ。砂糖や飽和脂肪などの炎症性成分に特に注目した研究を比較した結果、炎症性成分の含有量が最も少ない食事を採用していた人はうつ病のリスクが24%減少した。

同調査で注目したのは相関関係のみだが、実際には因果関係がありそうだ。この説明として挙げられるのが、多くの既に知られた分子・生理学メカニズムだ。そのほんの一部を挙げると、酸化ストレス、インスリン耐性、炎症、脳への血流、腸内の微生物などがある。

ラサールは「果物や野菜、ナッツ、(適度に摂取すべき)ワインに含まれることが多い抗炎症・抗酸化作用のある成分が豊富に含まれる食事は、脳を酸化ストレスや炎症から守ることで、脳に直接影響を与えることができる」と述べている。過去の研究でも、抗炎症作用のある食べ物が多く含まれる食べ物とうつ病のリスクの間に顕著なつながりがあることが分かっている。
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翻訳・編集=出田静

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