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2018.10.06 12:30

日本人も学びたい! スペインの人たちのお米の使い分け


バレンシア市内のあるレストランで、店員が「ボンバではないが、ボンバに似ている品種」と語るお米に出合った。口に入れると、ほどよいアルデンテ。何のお米だろうかと、米袋を見せてもらったのだが、品種名が書かかれていない。

その品種かわからないまま、市内のスーパーマーケットで再び物色していると、「どの米を買ったらいいのかわからず困っている外国人」と思われたのか、現地の中年の女性客が声をかけてきた。

「このお米がおすすめ。ボンバに似ているけど、ボンバよりも安いのよ」と言って、奨めてくれたのは「レドンド」という品種。市内のレストランで食べた「ボンバに似ている品種」もレドンドだったのかもしれない。

お米の品種にこだわる料理店

さて、こんなふうに、スペインの人たちは、専門家から一般の人たちまで、米の品種特性をきちんと把握して、調理法や価格などによって使い分けている。一方で、米が主食の日本ではどうだろう。さまざまな品種がありながら、“コシヒカリ至上主義”の風潮はいまでもある。

しかし、そんな日本にもあったのだ。スペイン人のお米の使い分けに負けないくらいの店が。東京・目黒の「八雲茶寮」では、米の品種ごとのポテンシャルを把握したうえで、調理法とのマッチングを考えている。

ある秋の夜のコース料理で登場した米料理は2種類。ひとつが鯖の棒寿司。もうひとつが松茸ごはん。高級店のような料理とお酒とホスピタリティからすると、「当店の米は魚沼コシヒカリです」と言われるかなと思いながら、使用しているお米の品種について尋ねると、鯖の棒寿司は千葉県産「ふさおとめ」、松茸ごはんは新潟県産「こしいぶき」。いわゆる高級米ではなかった。


ブランド名に頼らず、料理にあった米を自らの目利きで選んでいる。米に対する愛とリスペクトも感じる

世間での一般的な評価にとらわれず、自らの目利きでお米を選ぶ姿勢に心の中で感嘆すると同時に、お米に対する愛とリスペクトを感じた。

鯖や松茸をはじめ、全国の食材のなから選び抜いたものを使っている店なのだから、お米もきっとあらゆる種類のなかから、この2つを選んだのだろう。「八雲茶寮」のような、お米に対する目利きの店が増えれば、美味しいお米に出会える機会はもっと増えるに違いない。

日本のお米業界は、稲作のプロ(米農家)、精米のプロ(米屋)、料理のプロ(料理人)と、それぞれのスペシャリストの知識や技術が分断されてしまいがちで、稲作から料理までを一貫してフォローできるお米の総合スペシャリストは、ごくごくわずかだ。

米農家が精米や料理に目を向け、米屋が稲作や料理に目を向け、料理人が稲作や精米に目を向ける。すると、日本のお米はもっとおいしくなるし、消費者のお米の感度ももっと上がるのではないだろうか。

連載 : 台湾と日本のお米事情
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文=柏木智帆

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