ティンダーで学校をスワイプ 米大学、性問題啓発でアカウント開設

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米ユタ州立大学では最近、学生が人気出会い系アプリの「Tinder(ティンダー)」上で、自分の大学を“右スワイプ”できるようになった。より正確に言えば、同校の性的暴行・暴力防止情報局(SAAVI)の公式アカウントに対し「いいね」をできるようになった、ということだ。

SAAVIは、学生とのコミュニケーションを図るべく、ティンダー上にアカウントを開設した。コーディネーターのフェリシア・ガイェゴスは地元紙ヘラルド・ジャーナルに、「ティンダー上でのSAAVIアカウント開設は、学生が週末のデート相手を探しながら、(性行為に関する)同意や(性的暴行防止プログラムの)『アップスタンディング』、そして自分が利用可能なリソースについての情報を得る素晴らしい方法だ」と説明。「学生に一旦立ち止まらせて、同意の上での関係や互いを尊重する関係の大切さを思い出させる効果がある」と語った。

SAAVIはアカウントを利用して、性暴力防止のメッセージを発信したり、学生との連絡窓口やリソース提供の場を提供したりしようとしている。同校のアマンダ・デリートはインタビューで、「同意や、健全な関係、その場に居合わせた人による介入についてのメッセージを発信することが目的。つまり、性暴力を防ぐためのものだ」と語っている。

だがこの取り組みは当初、思わぬ問題に直面した。アカウントが開設直後にティンダー運営側によって閉鎖されたのだ。地元テレビ局のFox13によると、アカウントは8月2日に削除された。ただ、アカウントは間もなく復活。デリートによると、ティンダーによる再審査の結果、8月9日に再開した。

米国では「クレリー法」と呼ばれる連邦法により、各大学には構内で起きた犯罪の報告が義務付けられている。同法に基づきユタ州立大学が提供した情報によると、記事執筆時の最新データである2016年の報告では、キャンパス内で12件の性的暴行事件が発生していた。

ユタ州立大学では、今年行った調査から、構内での性的暴行やセクハラ行為が懲罰を受けることなく放置されている実態が発覚していた。この調査は、「#MeToo」運動の高まりに乗じて元学生が行ったソーシャルメディア上への投稿がきっかけで行われたものだった。

大学は学生を守る努力を怠ったことを認め、教育機関での性差別や性暴力の防止を定めた連邦改正教育法第9編(Title IX)の遵守を担当する責任者を解任した。ソルトレーク・トリビューン紙によると、同大学のノエル・クロケット学長は4月の記者会見で「前進の第一歩は、学生の虐待行為や不当な扱い、さらには性的暴行に対する対応を誤ったユタ州立大学の過ちを自ら認めることだ」と語った。
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編集=遠藤宗生

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