2つめは、とにかく結果を出すこと。一度、業績成長が凪の局面に入ると、社内全体である種「犯人探し」のように原因追求が始まり、そこから悪循環が生まれる。
そんな時にこそ、本業に集中すべきだと前田はいう。「売上などの数字で良い結果を残すことが、スタートアップの空気を改善する特効薬。結果が全てを癒す、です。」
3つ目は、「夢を語る」こと。前田は外部だけでなく、社内のメンバーにも、「SHOWROOMが世界をこんな風に変えるだろうし、実際、変え始めている」というビジョンを語り続けていた。
「深夜、オフィスに残った社員とバーミヤンで一晩、語り明かすようなこともあります。うちのオフィスでは、『抽象化』『イシューする』といった言葉が共通言語になっていて、『小籠包を抽象化してみて(笑)』と、課題を出したりします。これも、社員とのビジョンやバリュー浸透圧を合わせるのに大切な時間です。」
イベント全体を通して、前田の語り口は常にわかりやすく、ロジカルだった。前田の著書『人生の勝算』では彼の情熱的な面が目立ったが、質問には「その理由は大きくわけて3つあります」と数字で示してから、具体的な説明を提示する。
「句読点一つひとつの有無ですら、細かくチェックしますよね」という宮宗の言葉通り、前田はアイデアを伝えるための言葉を、慎重に選んでいる。
かといってロジカルに語り倒すだけではない。順序よく説明しながらも言葉の端々からは情熱が感じられる。ただ強い情熱をもつだけでなく、それをアイデアとして考え切り、シンプルな言葉にまとめる。イベントで語っていたメソッドは、まさに普段から前田が実践していることなのだ。最後に、そんな前田の情熱が表れている一言を紹介しよう。
「ユーザーから、『努力が報われる場所』というビジョンに共感しているからSHOWROOMを使っているんだ、と言われたことがあります。こうやって我々の思想に共感してSHOWROOMを使ってくれる人がいる。これを知るだけで、どんなに辛い経営課題も乗り越えていける。絶対にそういう人達を裏切れないし、幸せにしたい。サービスは、事業は、『想い』が全て、そんな気がします。」