「日本のカルチャーが役立つ」──シリコンバレーの起業家が拠点を東京に移したワケ

Game Closure 創業者兼CEO マイケル・カーター


──アジアにはインスタントゲームが発展する土壌があるということですね。インスタントゲームにはどのような可能性があるのでしょうか?

最もチャンスに恵まれているゲームだと思っています。

いまはフェイスブックやワッツアップ、ウィーチャットなど、誰もがメッセンジャーアプリを使う時代。これらのアプリを毎日利用する人は、世界に20〜30億人いるといわれています。

つまり、このプラットフォームでプレイできるゲームは20億人に届くのです。しかもユーザーは、何も新たにダウンロードしなくていい。



いつも通り友達と会話をしながら、気軽にゲームができるのです。老若男女、誰もが簡単に遊べる。この土壌に商品や経験を積み重ねれば、全く新しい世界をつくれるはずです。

面白いゲームとは、「入り口はシンプルだが、奥深いもの」

──正直言って、フェイスブックやLINE上には面白くないゲームもあったと思います。「ツムツム」(インスタントゲーム)は大ヒットしましたが、面白いゲーム、あるいはヒットするゲームには共通点があるのでしょうか。

その質問への答えは、YesでありNoでもあるでしょう。なぜなら、全てのゲームは少しずつ違うから。他のゲームにはない要素があるからこそ、楽しいのです。

ですが、ヒットするゲームには誰もが理解できるという共通点がある。特に最初にプレイするときは、シンプルに見えるものです。もしも、私が小さい従姉妹とゲームをして、彼女がゲームを理解できなかったら、そこで終わり。バイラルするゲームは絶対に簡単でなければならないのです。

──面白いゲームは、理解しやすいという点で共通している。

一方で、ゲームは結局のところビジネスでもあります。利益を上げるためにはシンプルさの中に、複雑性を混ぜなければならない。例えば、ツムツム(インスタントゲーム)は最初にプレイするときに気をつけるべきルールは3個のツムをつなげる、ということだけ。ミッキーやドナルドが溢れる、かわいいゲームだと思うでしょう。

けれど、アリエルを獲得したいのなら何度もプレイしてレベルアップしなければならない。その過程で新たなルールに気づく。それでゲームが広く、深くなるのです。最初は簡単で、後からどんどん複雑になる。これがインスタントゲームのキーです。



いま、日本発のゲームカルチャーが世界を変えようとしている

──ウェブソケットを大ヒットさせた次にゲームクロージャーを立ち上げたのはなぜでしょうか。これらのサービスをつくることで、何を目指しているのでしょうか。

僕の原体験は、ゲームにあります。小学生で初めてプログラミングに触れた頃、まず苦戦したのが2人プレイ用のゲームをつくること。やがて大人数で遊べるゲームをつくりたくてウェブベースのMMO(大人数型オンラインゲーム)を手がけましたが、とても難しく、コンピューターのことを学ぶうちにこれはゲームだけの問題ではないと気づきました。

チャットやドキュメント共有、ライブキャスティングエンターテインメントなど、あらゆるサービスが同じ原因に直面していた。

そこでシリコンバレーに移ってからはテクノロジーを学び、設計図を書きました。これがウェブソケットです。グーグルやアップル、マイクロソフトが僕のアイデアを使うようになり、あらゆるサービスがシンプルになった。ゼロベースのものが億単位の人に広がっていったんです。
次ページ > ウェブソケットは「ステップ1」

文=野口直希 写真=小田駿一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事