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Learning for All代表理事 李炯植

7人に1人の子どもが貧困世帯で暮らしていると言われる日本で、教育格差を終わらせるためには「貧困の連鎖」を断ち切らなければいけない──。李炯植が代表理事を務めるNPO法人Learning for Allは、すべての子どもたちの可能性を育むための学びと育ちを支えている。彼を突き動かす原動力と、Learning for Allの目指す「学びのあるべき姿」を訊いた。

見つける、繋げる、支援する

──李さんが代表を務められているLearning For All (以下、LFA)とは、どのような活動をしている団体なのでしょうか。

LFAは一言で言うと、学習や生活面、発達に困難を抱えた子どもたちの自立のために活動している団体です。もとは認定NPO法人Teach For Japanが2010年に始めた「学習支援事業」という一事業でしたが、2014年にNPO法人として独立しました。

現在LFAで行なっている事業は、主に2つあります。1つは、Teach For Japanのころから取り組んでいる「学習支援事業」です。経済的な要因で困難を抱えている子どもたちを対象にした、無料の学習支援教室を運営しています。単に勉強を教えるだけでなく、学習指導を通して子どもたちに夢や学ぶ目的を見つけてもらって、「貧困の連鎖」に巻き込まれないよう自立していくことを支援しています。

──貧困の連鎖、というのは?

いま、日本では7人に1人の子どもが貧困世帯で暮らしていると言われています*。貧困の子どもたちほど家庭環境に恵まれず、学歴形成が難しい状況にいます。そしてそれは、将来の就職難に繋がっていくため、結果として貧困が再生産されていくサイクルが生まれているのです。

私は、彼らの学習支援をすることで、そういった貧困の連鎖を断ち切る力を育んでほしいと願い、大学生のころからLFAの活動に従事してきました。けれども、続けていくうちに「学習支援だけじゃ足りない」ということに気づいて。それで2つ目の事業として始めたのが「子どもの家事業」です。

子どもの家は、“子どもの自立する力を育む「家でも学校でもない第三の居場所」”というコンセプトの下、日本財団と共同で運営している拠点です。学童保育のような仕組みで平日の14~21時まで、主に小学校1~3年の児童20人程度を受け入れます。ここではケースワーカーなど専門家の協力を得ながら、学習面だけでなく生活指導や食事提供まで含めた、包括的な子どもの自立支援を展開しています。

※2015年に厚生労働省が行なった国民生活基礎調査によると、「子どもの貧困率」は13.9%。貧困率とは、所得(等価可処分所得)が国民の平均(中央値)の半分に満たない人の割合。相対的貧困率ともいう。

──これまでやられていた学習支援に比べると、かなり子どもの家庭にも入り込むような、胆力のいる事業ですね。それはやはり「そこまで包括的な支援をしないと、問題の解決に至らない」と思われてのことでしょうか?

まさにその通りです。世間ではよく「学力低下は貧困が問題だ」と言われています。だから、彼らに勉強を教えてあげれば、問題は解決するのだと。私も恥ずかしながら、最初はそう思っていました。でも、LFAの活動を通して、それがミスリードだと気づいたんです。

「子どもの貧困」という言葉がありますが、実際は子どもたちが貧困なわけではない。家庭の貧困から生まれる諸問題が、子どもたちによくない影響を与えている、という構造なんです。そこには学力以前の段階で、ごはんを満足に食べられていなかったり、親から十分な愛を注いでもらっていなかったりと、さまざまな問題があって。そういった複合的な要因が重なって、結果的に「勉強が遅れる」状況が生まれている。

だから、子ども一人ひとりの家庭にまで目を向けて、彼らが健やかに発達・成長できるような環境を整えていくことが、より本質的な支援になると考えています。いや、そうじゃないとダメだなと。

文=西山武志 写真=小田駿一

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