スティーブ・ジョブズが「Connecting the dots」という言葉を残していますが、僕の20代を振り返ってみても、まさにそうだったと感じています。特に20代最後の年にリリースした「Pairs」は僕にとって20代の集大成と言えるようなものかもしれません。20代の経験を総動員して開発したものですから。
この経験は今の自分にも大きく影響していて。たとえばエンジェル投資をしている過程で出会った起業家やビジネスモデルに対しては「もしかしたらこの出会いやアイデアが数年後に活きていくるかもしれない」と考えるようにしていますし、一見、無駄に見えるアポについても同様です。
20代の頃はたくさんの失敗を経験し、そこから学び、次に活かしてきました。当時はとにかくがむしゃらで、目の前のことしか見えてなかった。それに比べると、いまはいろいろな経験をして、以前よりも先が見通せるようになりました。
だからこそ、ときには重い腰をあげて、バカになって試して、失敗する。こういったことをしないと、自分をアップデートしていけないと思っています。
いまは僕がエウレカを創業した時とは、スタートアップの環境も変わってきています。たとえば、資金面では借入もできるし、VCからでもエンジェル投資家から調達できるようになった。そういう意味では起業しやすい環境が整って、最初の一歩を踏み出す勇気は前よりもいらなくなったかもしれない。
でも、その後の泥臭さはどんなときも一緒だと思っています。僕の投資先でも頑張っている人はとことん頑張っているし、失敗もしている。
多分、いまの若い起業家でも失敗談を周りに話す機会が少ないだけで、本当に成果を出している人たちは大なり小なり失敗をしていて、そこから学んでいる部分が大きいのではないかな、と思います。
起業家ってほとんどがわがままで頑固。だからこそ、人に言われてすぐ負けちゃうような人は成功しないと思うし、むしろ失敗してみないと多分、成功もできない。
スタートアップのオプションが増えて、起業をする人の母数が増えれば日本から新たなイノベーションが生まれる可能性も高まる。日本で言うトヨタのような会社が、僕らの世代や次の世代から出てくるチャンスがあるのはすごく良いことだなと思います。
赤坂優◎2008年に起業し、株式会社エウレカを設立。同社が運営する「Pairs」は、会員数600万人の日本最大級の恋愛・婚活マッチングサービスに成長。 「Couples」はカップル向けコミュニケーションアプリとして600万ダウンロードに成長。 2015年5月、米国ニューヨークを拠点に「Match」や「ティンダー」や「Vimeo」などのサービスを運営するIAC(InterActiveCorp)にM&Aされ、2017年にロックアップを終えて取締役顧問を退任。