「私は協調を大事にしていて、チーム全員が自分はチームの一員で、評価されていると感じるよう努めています。そのため、私が指揮するマネジメントチームのある女性から『自分の意見が評価されていないように感じる』と言われた時はとても驚きました」
「私はその場で、彼女の見識を評価し頼りにしていることを伝えました。しかし、それは彼女に前から頻繁に伝えていたことです。気になった私は、なぜそうした印象を持ったのか尋ねました。すると『会議で私が発言するとき、私を見てくれないからです』と言われました。こうした小さな非言語的サインが、これほど大きな影響を持つのはなぜですか?」
人間の脳は特定の非言語的サインに即反応するようにできている。その反応は大昔、人間の祖先が現代社会とは全く異なる脅威と課題に直面していたときに埋め込まれたものだ。
例えば大昔は、近づいてくる人の手が見えていることを確認するのがとても重要だったかもしれない。手が隠れている場合、石や棒などの凶器を持っている可能性が高かったからだ。現代では、そのようなことを考える論理的な根拠はない。それでも誰かが手をポケットに入れたり後ろで組んだりして、両手を隠して現れたら、人は本能的にその人を信用しないだろう。
世界は変わっても、身ぶりを読むプロセスはいまだに原始的な感情的反応に基づいている。現代で考えられる脅威とは、自我や自尊心、アイデンティティーに対する脅威だ。人間は特に、どこかに含まれたい、評価されたい、所属したいという願望が強い。そのため、協力的なリーダーになるには、身ぶりを意識する必要がある。
どのような会話でも、コミュニケーションに使用されるのは言語的経路と非言語的経路の2つだ。そのため、同時に2つの異なる会話が成立してしまうことがある。先ほどの男性が過小評価していたのは、言葉と、言葉を裏付ける身ぶりを一致させる必要性だ。両者が一致しなければ、相手は言葉と身ぶりのどちらかを選ぶことになる。その場合、相手は非言語的サインを信じてしまうことが大半だ。
人が本能的にリーダーに求める身ぶりには、2つの種類がある。一つは温かさと気遣いを示す身ぶり、もう一つは力と地位を示す身ぶりだ。現代のリーダーにはどちらも必要だが、協力的なリーダーとして協調的な職場関係を構築するのに重要なのは、温かみのある非言語コミュニケーションだ。強さや地位、権威に関心が向きがちなリーダーは、こうした側面を過小評価し、あまり活用してこなかった。
全チームメンバーに対し温かくて社交的な身ぶりを心掛ければ、協力と高いパフォーマンスを支える感情豊かな職場環境が構築できる。ここでは、協力的なリーダーに求められる身ぶりをいくつか紹介する。