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スピーチライターに聞いた「リーダーの条件」

WHYFRAME / shutterstock

この世は「私」「社会」「世界」の3つで構成されている

私はスピーチライターとして、一部上場企業や外資系企業、ベンチャー企業の経営者や管理職、あるいは、政治家やNPO法人の代表など、さまざまな分野や規模の組織のリーダー層の講演やプレゼンテーション、いわゆる「パブリックスピーキング」を影で支えるブレーンとして活動してきた。

仕事を通じてさまざまなリーダーと付き合う中で、優れたリーダーにある種の共通点があることに気づいた。それは、いくつかあるのだが……本題に入る前に、いったん前提を共有しておきたい。

この世を大きく3つに分けると、「私」「社会」「世界」で構成されている。「私」は文字通り、私という固有の存在のこと。「社会」は建造物やプロダクト、法律など、いわゆる人間が何らかの形で生み出したものだ。そして、「世界」は、この世に人間が生まれる前から存在していた環境や倫理、道徳など、揺らぐことのない普遍的なものとなる。

普段、人は「私」と「社会」とを行き来することで日々を営んでいる。その枠組みから逸脱することはそう起こらない。だが、ふとしたきっかけで「社会」を飛び出し、「世界」の中で振る舞おうとすることがある。既存のルールにとらわれず、より普遍的な価値観に従おうとすると言い換えてもよい。

具体例を挙げてみよう。かつて建設業界では談合がしきりに問題視されていた。だが、建設業界という社会において、談合こそが正義であり、ステークホルダーみんなが利益を得られる「是」であった。そこへ異を唱えるリーダーが現れた。建設業界の外側にいて建設業界の暗黙のルールを全く無視する彼は、彼の「倫理と照らし合わせて談合は『否』である」とし、談合に与することはなかった。今では彼の会社は大きく成長している。それは彼自身が立脚していたのが建設業界の「社会」の中ではなく、社会の外側の「世界」だったからだ。

昨今、日本で顕在化する問題のほとんどが、この構造に起因する。セクハラ問題の#MeTooでも、日大アメフト問題でも。以前ならある種の「村社会」が強固なもので、その中だけで通用する論理や常識が存在していた。けれどもインターネットの発達によって、その力が組織から個人へと移行し、個人がエンパワーメントされたことによって、「村の常識」が「世界の非常識」となって表出してきたのだ。

優れたリーダーは明確なビジョンを持っている

「社会」の外にある「世界」の存在に気づき、その「世界」に立脚している。それが、優れたリーダーの前提条件だ。そこで彼らは既存の枠組みに苛立ち、静かな怒りを持って、「社会を変える」ことを半ば使命のように感じている。

多くの人は、社会の中で疑問を持たずに生きるため、「やるべきこと」に気づかず、モチベーションを充填しなければいけない。けれども優れたリーダーは、「社会はこうあるべき」と強く願う力がある。そして「やるべきことをやらざるを得ない」ほどの必然性に駆られている。それを一言でいえば、「ビジョナリーである」ということだろう。

ビジョナリーなリーダーというと、カリスマといったイメージを持つ読者も多いかもしれない。けれどもリーダーにもそれぞれタイプがある。トップダウンで周りを引っ張っていくタイプもいれば、ボトムアップで周りが支えるタイプもいる。三国志なら、前者が曹操で、後者は劉備、といったところだろうか。ただ、いずれのタイプにせよ、リーダーが信じるビジョンを、周りへ伝えることが必要となる。

たとえば、イーロン・マスクは自分が信じるビジョンを明確な言葉で伝えられるリーダーのひとりだろう。「基本的原理を疑え」という言葉は、まさに優れたリーダーの発想だ。AIや自動運転、宇宙開発など新たなテクノロジーを、いかに「人類の進化」のために活用するか、壮大なスケールで考え抜き、強い言葉にしている。

だが、イーロン・マスクのようにすべてのリーダーが雄弁である必要はない。特に「周りに支えられるタイプ」は、不器用な場合が多いことも確かだ。その代わり、自らが信じているビジョンをどれだけ解像度高くイメージできているか、ということが重要となる。

たとえば、ビートたけしはその典型とも言えるだろう。彼はボソボソと話し、決して器用にまくし立てるタイプではない。だが、その言葉にはパワーがある。金や欲望、暴力に弱い、人間の本質的な脆さや危うさを実体験として知っている。

何に触れてきたのかがその人の価値観を形成するのだとすれば、下町で生まれ育ち、ストリップ劇場で芸人として下積みした彼には、それが生々しいリアリズムとして身についているのかもしれない。

構成=大矢幸世

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