ビジネス

2018.08.13

スポーツの組織問題も「分散型技術」で解決する?

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分散型技術で作る、選手のための仕組み

では、思考実験として、新しい技術を使って、スポーツ選手のための、「連盟」や「協会」が要らない枠組みが作れないだろうか?

例えば、スタジアム等の大会開催場所や業者の入札はAIでプログラム化し、チケットの販売もネットベースで行う(QRコードを使えば、本部で紙のチケットを封筒に入れて送る手間はかからないし、紙が欲しい人はコンビニのプリンターが使える)。

そのうえで、チケットやグッズ販売の収益、さらに公的な助成金なども、直接選手に配分されるようにプログラム化しておけば良い。アプリを使えば、チケットやグッズの販売に加え、クラウドファンディングによる選手支援などの機能も、全てまとめてファンに提供できるだろう。

お金の出入りなどの帳簿は分散型台帳で管理し、選手それぞれに暗号鍵を渡し、選手の誰もが帳簿を共有できるようにすれば、不正流用も防げそうである。また、「助成金が競技力向上のためにきちんと使われるかどうか」が心配であれば、助成金を現金ではなく、残高と紐付けたデビットカードで渡せば、選手が何を買ったかの記録も残る。

もちろん、「連盟」や「協会」にはもっと複雑な役割があるとの反論はあろう。例えば、競技寿命の短い選手の引退後の生活支援や、さまざまな交渉事・報告などである。しかし、競技収益の一部を長期運用に回し、数十年後に分配するといったプログラミングは、そう難しくないように思われる。

また、仮に、スポーツとは直接の関係の薄い交渉事や報告に多くの資源が割かれているならば、それこそ市場メカニズムや"RegTech"でどこまで代替できるか、再考していくべきではないだろうか?

スポーツの連盟や協会を作る上で最も大事なことは、言うまでもなく、「選手が中心」という考え方である。そして、分散型台帳技術の一つの大きなメリットも、「中央の帳簿(および中央の帳簿を握っている主体)が中心」から、「参加者が中心」へという、ガバナンスや考え方の転換なのである。

もちろん、選手のために本当に真摯に取り組み、少人数で頑張っている連盟や協会も数多くあるだろう。こうした機関にとっても、「新しい技術を活用し、より選手のためになる枠組みを作れないか?」と考えていくことは、真に選手のために組織を革新し続けていく上で、有益ではないだろうか。

連載 : 金融から紐解く、世界の「今」
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文=山岡浩巳

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