また、同じ業態やサービスの繰り返しではなく、オリジナルなものを提供できなくちゃおもしろくないと考えるところも、マジックと通じています。マジシャンは失敗確率が低い簡単な手品はやりたがりません。彼らは難しい技やアイディアをどんどん仕込みたくなる人たちです。我々が展開している店やサービスも、誰がやってもできるものではない。自分たちで練りに練ったものを、相手の心を動かすために常に打ち出していくというスタイル、そこも手品っぽいかもしれませんね。
私が大学を出て商社に就職するころには、もう手品をすることはなくなっていました。代わりに、というわけでもないですけど、絵を描くことは学生時代から続けていて、本の装丁や雑誌のイラストなどを描いていて、就職してからも、働きながら個展を開いたりしました。
個展の作品をつくっている様子
おとなしく会社員をやっているだけでは満足できなかった。入社して10年経ったころ、このまま定年を迎える人生はちょっと考えられないなという気持ちが湧いてきました。
会社で仕事をしていると、かなりの部分があらかじめ決められたことで支配されていて、それをなぞっていかなくてはいけない。みずからの発意で能動的に行動することが少なくなっていきます。そういう環境に慣れてしまうのは、あまりいいことじゃないと思います。
自分で決めること、自由にふるまうことにはしんどさも伴うけれど、意識的に自由を引き寄せるようにしたほうがいい。そうしてこそ人生は楽しくなっていきます。
1996年に開催された遠山の個展
「将来やりたい"企て"リスト」を心の拠り所に
20代の人に「これをやっておくといい」というアドバイスができるとすれば、将来やりたいことを100個くらい紙に書いておくといい。難しければ、10個でも20個でも。
大人になってから何か大きなチャレンジをするときは、必然的に不安も大きくなってしまいます。だから、確固とした理由が欲しくなるんです。そんなとき、若い頃に書き残しておいた紙が役立ちます。チャレンジしようとしていることが、「やりたいこと」として明記してあったら勇気が出るでしょう?不安なときは、どこか心の拠り所が欲しいもの。
だからいつか歳を重ねたときに新しいことに挑戦したくなったら、その紙を見て「子どものころからいつかやりたいと考えていたんだ、ほらここに書いてある通りに」と示せるものがあれば、ずいぶん踏み出しやすくなる。きっと周囲を納得させるのにも役立ちますよ。「ずっと抱いていた夢なんだ」などと言って。
野球のイチローだってサッカーの本田圭佑だって、学生の頃の卒業文集に夢を綴って実際に叶えているわけです。心の拠り所として、そして自分の夢を忘れないためにも、これは有用だと思います。