アテネで生まれ、英ケンブリッジ大学で学び、1980年にニューヨークに移住。結婚・出産、政治家への挑戦、離婚、企業と、さまざまな転機を経験した。アメリカンドリームを地で行くカリスマ女性起業家が本音で人生を語る(前編はこちら)。
──特に日本はそうですが、女性は仕事と家庭の両立を求められがちです。日本は、失敗にも寛容な文化ではありません。翻って、あなたは結婚や出産も経験しながら、果敢に挑戦を続けてきました。
幸いにも、失敗は成功の対極ではなく、布石だという教えを母から受けたからだ。人生でもキャリアでも、失敗や間違いを経験しながら、そこから学んできた。ハフィントンポストの創業から2年後に倒れたときも、そうだ。
過労で倒れる前、(大学進学を控えた娘と、ある大学の見学ツアーに参加していた)私は、娘からの要求をのみ、ツアー中、昼間はスマホを使わないことにしていた。だからと言って、仕事をしないわけにはいかない。毎夜、ディナーを終えてホテルに戻り、娘のクリスティーナが眠りについたら、明け方まで仕事をすることにしていた。
この働き方は、少しの間、うまくいった。だが、(ツアーから)帰宅した翌朝、過労で倒れ、私は悟ったのだ。要は(ワークライフの)バランスではなく、融合なのだと。
仕事と生活や心身の幸福、生産性は対極にあるものではない。だから、バランスを取る必要などないのだ。どれも同一線上にあり、一方が向上すれば、他方も向上することは科学的にもはっきりしている。良き親(そして、良き仕事人)であるには、まず、自分自身を大切にすること。もっと早く、これに気づいていたらと思う。
──日本では、1980年代に総合職に就いていた女性の大半が離職しています。あなたは著書の中で「トップや幹部の女性が、その地位を捨てるのは、子育てだけが原因ではない」と書いていますね。
長時間労働や睡眠不足が仕事への真剣さや献身の表れだとみなされるような、ストレスやバーンアウトが付き物の文化においては、女性が最も大きな代償を払うことになる。女性は、家事の大半を切り盛りしているため、(長時間労働が難しいという理由で)出世から外されたり、昇進しにくかったりする。これが、働き方や生活の改革が急務である理由の一つだ。
──ハフィントンポストを退社し、スライブ・グローバルを立ち上げようと思ったのは、なぜですか。
スライブ・グローバルを形作っている理念に以前から関心があった。(心身の幸福を優先すべきといった)古代の知恵や慣例が、科学によって、いかに裏打ちされていることか。過労で倒れたのをきっかけに、心身の幸福だけでなく、心身の幸福と生産性の関係に一層情熱を傾けるようになった。
それが、『サード・メトリック──しなやかにつかみとる持続可能な成功』や『スリープ・レボリューション──最高の結果を残すための「睡眠革命」』の執筆につながった。