そして、ストレスやバーンアウト、睡眠不足について、世界を講演して回るうちに、人々が生活を変えたいと、どれだけ深く願っているかを知り、講演で世間の関心を高めるだけでは物足りなくなった。この情熱をリアルで具体的なものに転換し、人々が日々の生活を変えられるよう支援する必要があると感じたのだ。それは、無視するわけにはいかない気づきだった。だから、スライブ・グローバルを立ち上げた。
──スライブ・グローバルは、米ウーバー・テクノロジーズや米金融最大手JPモルガン・チェースなどを顧客に持ち、研修やコーチングを行っていると聞きます。顧客に対し、企業業績と社員の幸福が両立可能であることをどのように示すのですか。
弊社は、(ブログやポッドキャストなどの)メディアプラットフォームと、(充電・リフレッシュ促進アプリなどの)テクノロジーによって、個人や企業、コミュニティーが心身の幸福とパフォーマンスを高め、行動を変えられるよう後押しするスタートアップだ。
その使命を果たすために、実地研修やワークショップ、デジタル研修、顧客に合わせてカスタマイズした調査や分析、(心身の健康を促す製品の販売など)Eコマースを展開している。メディアプラットフォームでは、新しい型の成功を象徴する人たちの特集も行う。行動を変えるためのアプリなど、テクノロジープラットフォームも展開している。
こうしたサービスや製品は、どれも心身の幸福とパフォーマンスの関係を示す最新科学に基づくものだ。たとえば、睡眠不足は意思決定力を大きく損ない、マルチタスクは生産性を4割下げる。だが、幸福を優先し、テクノロジーとの付き合い方をコントロールすれば、パフォーマンスは、あらゆる基準に照らして上向く。
──あなたはデジタルデバイス中毒などに警鐘を鳴らしていますが、ソーシャルメディアについて、どう思いますか。フェイスブックの個人情報流出問題や同社の対応策については、どうでしょう?
この1年が、人間とテクノロジーの関係における転換点になったのは間違いない。テクノロジーのおかげで、数々の素晴らしいことが可能になったが、私たちは、テクノロジーが人間に何をしてきたのかという問題に気づき始めている。注意力や思考を奪われ、上の空になり、人との結びつきが疎遠になる。
スライブ・グローバルがアプリを開発した理由の1つも、ここにある。人々がテクノロジーとの間に境界線を引き、自分の時間のコントロールを取り戻せるよう応援するためだ。
一方、素晴らしいことに、テクノロジーをめぐる対話は急速に変わっている。(アルゴリズム変更など)フェイスブックの対策だけではない。グーグルが発表した(スマホの使用時間管理などの)「デジタル幸福」機能に加え、インスタグラムやスナップチャットも、ユーザーが「有益な時間」を過ごせるよう、配慮し始めている。アップルが、6月の世界開発者会議で、テクノロジーとの境界線を引く一助として発表した新機能、「スクリーン・タイム」や「ダウンタイム」など、メジャーなツールも誕生している。
どれもポジティブな前進だが、自分の生活を変え、休養や元気を取り戻すのに、大手テック企業の音頭を待つ必要などないことも心に留めておくべきだ。