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シネマの女は最後に微笑む

Liderina / sshutterstock

先月末、東京都内で講演した自民党の二階幹事長の、「子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考えて(いる人がいる)」という発言が、特定の家族観の押しつけであるとして各方面からの批判を呼んだ。

この社会において「子どもを産まない方が幸せ」つまり「子どものいない人生の方が幸せ」という思いが生まれるとすれば、それは第一に、女性にとっての子育て環境がかつてより厳しくなってきているからだ。

保育園の不足や教育費の増大だけではない。ほとんどの人が仕事をもつ現在でも、家事・育児の多くが妻の負担。そのため、キャリア形成を諦めざるを得なくなる人もいる。そんな状態でもし離婚すれば、シングルマザーとして貧困に直面する。少子化を憂うなら、まず制度と環境を整備してくれと言いたい人は多いだろう。

第二には、結婚をし子どもを産むことが「女性の生き方」として当然視され、規範となっていた時代が終わり、個人の生き方の自由が尊重されるようになった時代の趨勢がある。

結婚して専業主婦になり子育てをする、結婚し仕事を一旦やめて子育てに専念しその後に再就職する、結婚し仕事を継続しつつ子育てをする、結婚し仕事を継続しつつ子どもはもたない、仕事をしつつ結婚はせずに子どもをもつ、仕事をしつつ結婚せず子どもももたない‥‥。

ざっと書き出しただけでもこれだけのライフコースがある。自信をもってその一つを選んだつもりでも、思わぬ結果が待っているかもしれない。女の人生は分かれ道だらけだ。

今回取り上げるのは、人生に悩みつつも前向きに生きようとする30代の女性たちを、低い目線で淡々と描き出した『すーちゃん、まいちゃん、さわ子さん』(御法川修監督、2013)。益田ミリのマンガ「すーちゃん」シリーズを元にした群像劇だ。

「すーちゃん、まいちゃん、さわ子さん」とはそれぞれの呼び名。昔バイトで知り合ってから、親しい友人付き合いを続けてきた3人の日常が交互に描かれる中で、物語はゆっくりと進んでいく。

同年代の女性たちの密かな共感を呼んだというこの作品、冒頭からやけにほっこりしたムードが漂い、ヒロインたちにはさほど癖もなく、強烈なキャラクターも登場せず、単なるほのぼのしみじみした癒し系ドラマかと思って見ていくと、意外と細かく毒が仕込まれている。

「すーちゃん」こと森本好子(柴咲コウ)はカフェで働き、料理が趣味。しっかり者ではあるが、恋愛には奥手でこの5年間恋人はいない。職場では若くて気紛れな女性のバイトのフォローをしたり、同僚に押し付けられたクレーマーを引き受けたりと、気苦労も多い。

ある日、優しそうなイケメンの中田マネージャーと親しく話したことから、ほのかな恋心を抱くようになる。

「まいちゃん」こと岡崎まい子(真木よう子)は、OA機器メーカーのベテラン営業部員。上司から何かと頼りにされ、クレーム対応に駆り出されたりするが、出先では美しい容貌と独身であることをネタにセクハラ発言を連発され、笑顔でいなしつつも心の中で「死んでくれないかな」と呟く。

不倫関係にある既婚者の男の甘えに苛ついて、思わず厭味を言ってしまい、それもすぐに冗談めかして収めたり。公私のストレスで肌の状態が悪い。

文=大野左紀子

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