「さわ子さん」こと林さわこ(寺島しのぶ)は、彼女たちより若干歳上でフリーのWEBデザイナー。自宅で仕事をしつつ、母と一緒に、寝たきりになった痴呆の祖母の介護をしている。家族思いの優しい性格ゆえに、事実上家に縛られている状態で、子連れで訪問してきた兄夫婦が祖母に挨拶もせずに帰ったことに憤る。
そんなある日、偶然に再会した高校の同級生、吉田君と話が弾み、誘われてデートをするようになる。
仕事を持ち、人間関係では年齢相応の苦さを飲み込み、一方で日々の小さな楽しみを見つけながら、この先どうやっていこうか、ずっと独身のままでいいのかという漠然とした不安をかかえる3人。
「こうしてみんな結局おばさんになって行くんだね」という好子の台詞は、実感のこもった寂しさや諦めとともに呟かれる。
物語を牽引するのは、それぞれの恋愛や恋愛未満の関係性だ。しかし男たちは最初期待をもたせつつも、ことごとくそれを裏切り、ヒロインたちを傷つける。なぜ傷つけているのかに、男たちはまったく気づかないで終わる。つまりこのドラマは「男の人に期待しても仕方ないですね」とやんわり言っているのだ。
好子はある日突然、同僚女性から中田マネージャーとの結婚を報告されショックを受ける。水面下であっという間に婚約まで持ち込んだこの女性の行動を支えるのは、結婚への強い執念だ。要所要所で確実に年上の女にダメージを与える笑顔のマウンティングも、その必死な思いから来るものだろう。
そこまで必死になれない時点で好子は最初から負けていたのだが、最後まで自信なさげで優柔不断な中田の態度を見れば、むしろ負けて良かったのでは?と思わされる。
更に、バイトの面接に来た男は一見真面目そうに見えたものの、正社員になれないとわかると逆ギレし、性差別と職業差別をぶつける始末。
まい子は、甘えを隠そうともしなくなった不倫相手と別れ、結婚相談所に登録する。職場でもプライベートでも心ない発言に傷つき怒りを溜め込んできた彼女の中に、男性への期待はほとんどなかっただろう。仕事も私生活も一度リセットしなければ前に進めないくらい、煮詰まっていたのだ。
だが結婚し母となり、一応今の生活を肯定しながらも、「捨てた方の人生の続きもありだったんじゃないかぁって」と呟くあたりに、選択へのわずかな懐疑がのぞく。夫と家事育児を分担し、尚かつ仕事でもキャリアを重ねるという生き方を、彼女は選ぶことができなかった。そこまでできる人は、ごくごく少数なのだ。
一番気の毒なのは、さわ子である。吉田君に求婚されるも、高齢出産についてあまりにデリカシーのないことを言われ、それがいかに相手を傷つけているか理解できない様子にキレて付き合い解消。
40歳を目前にした彼女は、この先も自宅で祖母の介護、その後は母の介護をしながら老いていくのだろうか。年下のバイト君に片思いされている好子や、子育てに生き甲斐を見出すまい子のように、さわ子にも少しくらい希望の光が見えたっていいのではないだろうか。
男には期待できないという結論に終わるこのドラマで、ロールモデルとして示されているのは、好子を店長に推すオーナーの年輩女性、木野花が演じる木庭さんだ。シングルで子どもを産み育てながら仕事をしてきた彼女の人生がいかに大変なものであったかは、想像するしかない。願わくば、後から同じ道を行く人が同じ苦労を味わわなくて済みますように。
連載 : シネマの女は最後に微笑む
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