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常識にとらわれない挑戦者たち

「紫根染」のワークショップの様子と完成したもの

Forbes JAPANが主催した「スモール・ジャイアンツ」大賞、「CUTTING EDGE」部門(最先端技術)で高得点の評価を得たエネフォレスト。日本で唯一世界基準をクリアした空気清浄機「エアロシールド」を世に送り出した「小さな大企業」だが、地元を活性化するためのもうひとつの事業も進めている。

本社を置く大分県を中心とする小水力発電事業だ。

県下、竹田市の竹田市土地改良区宮ケ瀬工区の周辺では、昔から紫草による「紫根染」という草木染めが続いていた。しかし、高齢化と後継者不足により、紫根染の伝統は途切れようとしていた。

「これまでも紫根染のワークショップは開催されていましたが、地域の外には知られておらず、本当に近所の人しか集まっていませんでした。しかし、農村部を再生する弊社の小水力発電事業が注目を浴びたことで、紫根染のワークショップにもマスコミ取材が来て、地域の外からも人が集まるようになりました」

エネフォレストの代表取締役を務める木原寿彦はこう語るが、彼が考えたのは、地域の人達が潤うスキームだ。利益が少なくても小水力発電事業を続けている理由は、外から来た大企業がお金を吸い上げていくスキームでは、農村部はますます疲弊すると考えたからだ。

耕作放棄地に太陽光パネルを設置する例は全国各地で見られる。しかし、エネフォレストは太陽光発電を扱わず、すべて小水力発電だ。農業水路を利用した小水力発電は省スペースで、24時間安定した電力供給が可能だという。


水車発電機

「発電に必要な面積の比較でも、小水力発電の1時間あたりの発電量は、同面積における太陽光パネルの100枚分です。これを1日あたりで換算すると、曇天時や日没後に発電量が落ちる太陽光パネルの350枚分にもなります。耕作放棄地に太陽光パネルを設置するのではなく、農地のある地域を活性化して農業を生き返らせる。これが本質にかなっていると思います」

収益としては大きくないが、この事業は日本各地で疲弊している農村地域を救う可能性を秘めている。

地元でお金が回るシステム

木原は事業を始めた経緯をこう説明する。

「私の本拠地は大分県大分市ですが、地元では耕作放棄地が大きな問題になっています。農業自給率が下がると国力も落ち、外国との交渉力も落ちます。自分としても将来は大分で農業をしながら暮らしたいという夢があります。そこをなんとか解決できないかという問題意識を持っていました」

大規模農業に集約されるアメリカなどとは違い、日本の農村は小規模農家が中心で高齢化が進む。若者の就農に対する魅力は落ち、後継者不足は深刻だ。

「地域の農業を終わらせないためには、地域活性化や人の集まる地域づくり、地元でお金が回るシステムを作れないかと考えたんです」

実は大分県は再生可能エネルギー発電量日本一の県。しかし、その大部分を占めるのは、県内各地の温泉を利用した九州電力の大規模な地熱発電だった。

「これではなかなか地元にお金が落ちません。町や村単位でお金が回る仕組みにしないと地域はこのまま衰退してしまいます。そう考えていた時に、ローカルならではの大きな資産があることに気づきました。それは各地域の土地改良組合が持っている農業水路の水利権。これが大きな力になると考えたんです」

文=畠山理仁

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