ビジネス

2018.06.26 17:00

トランプの関税発動が米企業の役に立たない理由


トランプが課した関税のために生産拠点を移す企業は、ハーレーにとどまらないだろう。例えば、トランプはミシガン州での支持拡大に向けて自動車関税を引き上げる考えだが、自動車業界に関する実際のところは、次のとおりだ。

今年第1四半期の米国の自動車の輸出額は、約135億7000万ドル。主な輸出先は、トランプが貿易について最大の批判の対象としているカナダ、中国、ドイツ、メキシコだ。これら各国には、ホンダや日産のような外国自動車メーカーも、オハイオやテネシーなどの各州で生産する自動車を輸出している。

そして、トヨタやホンダ、日産、そしてドイツのフォルクスワーゲンやBMW、メルセデスベンツ、韓国のヒュンダイなどはいずれも、米国に大規模な投資を行い、組立工場その他で何十万人もの労働者を雇用している。

悪いのは貿易協定ではない

米国に進出した外国の自動車メーカー各社は、北米自由貿易協定(NAFTA)に基づき、カナダとメキシコにも投資を行ってきた。生産拠点を北米全体に拡大するためだ。そのNAFTAの発効によって、米国の「ラストベルト(さび付いた工業地帯)」で雇用が減少したのかといえば、それは確かにそうだ。

だが、企業を誘致する上での米国の競争力を奪った本当の“犯人”は、他国に比べて膨大な金額に上る医療コストだ。カナダにもメキシコにも、そしてドイツや中国にも、国が運営するそれぞれの医療制度がある。そのため、米国より大幅に人件費を抑えることができる。米国の競争力を高め、雇用を増やすことにつながるのは、まさにその医療制度に関する政策の変更だ。

ホワイトハウスの戦略は、中間選挙が終わったずっと後まで、あるいはトランプが任期を終えるまで、有権者はこうしたことに気づかないだろうとの考えに基づいている。だが、ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのカイル・ハンドリー助教(経営経済学・公共政策)は、「…これらの産業を成長させ、雇用を取り戻し、かつてのような輝きを取り戻せるというのは、口先だけの約束だ」と指摘している。

編集=木内涼子

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