──ビリオネアの研究を通じてどのような発見がありましたか。
ジョン・スヴィオクラ(以下、スヴィオクラ):すでに成功を収めている人々が富をさらに築いていることの方が多かった点が驚きでしたね。当初は若い人々が画期的なアイデアで一発当てているケースが多いと考えていたのですが、実際には経験を積んだ壮年の人が成功しているケースが多かったのです。
多くの場合、彼らは新しい「成功の法則」を思いつくのです。それも一つではなく、複数です。例えば、スターバックスのハワード・シュルツ会長などがそうです。創業者から同社を買い取った彼は、ユニークな経営でシアトルの小さなコーヒー店を世界的なチェーンに育て上げました。でも、周りにコーヒー店はごまんとあったわけです。ところが彼は複数のアイデアを同時に実行して競合に差をつけています。
特に、注目すべきは同社の労働規約や福利厚生です。当時としては珍しく、社員に手厚い福利厚生を供与しています。労働時間も短く、店舗も300平方フィート(約8坪)に抑えることで社員の負担が少なくなるように工夫しています。それにより収益が上がり、事業が拡大しやすくなったのです.
また、商品の品質を高めるためにも、独自のサプライチェーンを確立しています。他にも、生産地に配慮したり、商品のネーミングに特別感を出したり……。こうしたアイデアの組み合わせを同時に実行することで、新種のコーヒー店を作ることに成功したのです。
──彼らは経験のどういった点に学び、成功しているのでしょうか。
スヴィオクラ:2点ほどあります。一つ目は失敗を学びの機会として捉えて成長しようとする点です。二つ目は信じがたいほどの「グリット(根性)」を持っています。彼らは目標を設定すると、それを達成するためにひたすら行動を繰り返すのです。しかもうまくいかなければ、次は異なるアプローチを試みます。あまりにも多くの人が簡単に諦めてしまうのです。さらに富豪はミスをしても、ポジティブには捉えず、悪かった点を追及します。
グリットで成功したビリオネアの1人に、米印刷会社大手「テイラー・コーポレーション」の創業者、グレン・テイラーがいます。彼は初め、結婚式の招待状を専門に制作する印刷工房「カールソン・ウェディング・サービス」で働き始めたのですが、オーナーに対して給与交渉をした際に高い目標設定をしたのです。