何かを受け取っている、という思いは、発案者のマッシモも同じだ。「私は忙しくなったが、訪れる度に、とても大切なものを受け取っている。自分は取るに足りない存在だと思って、無表情だった人たちが、自分は価値ある存在だと感じられるようになり、徐々に笑顔を取り戻していくこと、その様子を見るのが何よりも嬉しい」
ミラノ万博でも料理を振る舞い、この日ドミニクシェフのサポートとして参加していた東京・銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のルカシェフは今、東京に同じ構想のレストランを作れないかと考えている。
ルカ・ファンティン(左)とドミニク・クレン(右)
「ここには料理の原点がある。その場にある食材で、心を込めて、できるだけ美味しい食事を作る。まるで、家族に食事を作るような、料理を作る上で大切な温かい気持ちを思い出させてくれる」
最初の客がやってくる直前、マッシモが筆者にスタッフ用のエプロンをかけてくれながら言った言葉がとても印象的だった。
「これは革命なんだ。あなたはここに立っていて、ゲストとコミュニケーションをとることができる。あなたはサービスを通じて、革命に参加している」
日本語の「革命」という言葉はいささか堅苦しく頭でっかちな匂いがするのだが、人と人が食を囲み、相互に温かなコミュニケーションが生まれる、こんな平和な「革命」があっていい。
イタリアは、「スローフード」という考えの発祥の地でもある。一人のイタリア人シェフが起こす食の革命。「Food for Soul」という基金をベースに、わずか3年の間に7店舗がオープンするというのは、かなりスピーディな展開と言えるだろう。世界一に輝いたマッシモの人柄や信用力がバックにあるのはもちろんだが、サポートする人が増えているのは、それだけではなく、それが今、私たちに欠けているものだと、皆が薄々気づいているからなのかもしれない。
早すぎる時代の流れの中で、少し足を止めてみてはどうか。「レフェットリオ」が投げかけるのは、現代のルネッサンス、人間主義への回帰への誘いなのかもしれない。