ローマ神話には、たくさんの神々が登場する。フランス人で社会心理学者の親友から、神様は三角形でバランスがとれているという話を聞いた。これは組織にも共通する、経営の組み合わせでもあると思う。
三角の上に位置するのが、ヴィジョンを指し示す知の神「ユピテル(Jupiter)」でつまりCEOや社長、そして戦略を持って闘う軍神の「マルス(Mars)」でビジョンを実行するCOO、調和の神「クイリヌス(Quirinus)」はCFO、この三大主神格は、まさにゴールデントライアングルだ。
経営がうまくいっている会社には、この三役が揃っている。逆にうまくいっていない会社はどれかが欠けていることが多い。このゴールデントライアングルは、組織には絶対不可欠な三大要素なのだ。
これからの新しい価値とは
この数十年で、モノから情報の時代への移行が進み、「価値」が変化した。さらに次の価値へとものすごいスピードで変わろうとしている今、スタートアップの在り方も変わってきている。4月に起きたフェイスブックの個人情報管理に関する事件は、一つの社会現象だ。次のパラダイムシフトで、ブロックチェーン技術によるトラステッドインターネットによって情報が集約されると、こういったことも変わっていくだろう。
ここにAIなどの新しいテクノロジーが加わる。モノの会社は情報に近づこうとし、一方で情報の会社がモノにも近づいていき、複合的に混ざり合っていくようになる。
国の行なっていることが企業でもできるようになり、国家とは何かを改めて考えることにもなると思う。そう考えると、次世代の社会の新しい価値は、“信用”になるのだろうか。
大企業とスタートアップの関係
最近、マネックスグループは新しい価値を加えた。ブロックチェーンの技術を活用した事業会社をファミリーに迎え、次の時代の企業ビジョンを一気に拡張させた。
マネックスは、1999年の起業時にソニーが応援し、共同出資することになった会社だ。ソニーという大企業のグループ会社という信用を得て、大きく成長した企業の一つだ。インターネットサービスのフリービットも同じようにソニーが応援した企業だ。
この二社は、上場し大きくなった今でも付き合いがある。マネックス代表の松本大さんとフリービット会長の石田宏樹さんとは、会うたびに、次のパラダイムがもたらす変化やこれからのビジョンやアクションについて、毎回数時間のディスカッションをしている。
私は常々、日本の社会が変革を起こすためには、大企業が本格的にスタートアップを助けていくべきだと思っている。ソニーのように大企業1社がスタートアップ2社をサポートできれば、大企業100社でスタートアップ200社を成長させることができる計算になる。大企業も変革を迫られる中、スタートアップの気持ちで行動し、変わらなくてはならない。
これまでの歴史を振り返ると、社会の価値が変化するたびにスタートアップの在り方も変わってきた。だからこそ、チェンジの時期には、起業しやすい。そして今、まさにパラダイムシフトする寸前だ。
フランスが国をあげてスタートアップの育成に取り組んでいるように、日本も国が一体となり、大企業もスタートアップも変革を起こさなくてはならない。今回フランスに行って、そう強く思った。
The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜
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