さて、ポルトガルの観光地としてのにわかな盛り上がりだが、住民たちもそれを感じずにはいられないだろう。ロイター通信によると、2017年、ポルトガルを訪問した外国人観光客の数は1270万人で、前年比12%の増加率を記録した。
最新の報告書によると、8割以上がヨーロッパからの観光客で、イギリス、フランスからが最も多い。また、1割ほどがアメリカ大陸からで、その半数がアメリカから、4分の1がブラジルからとなっている。
リスボンの街は魅力的だ。だいたいどこを切り取っても、少しノスタルジックな風景が絵になる。まさに「インスタ映え」するシーンは、観光客をさらに惹きつける要素となっている。レトロなケーブルカーが走る、急坂から眺める湾岸の風景は、思わず写真に撮りたくなる。
サンフランシスコとリスボンはよく比較されるのだが、実際、街を歩いているだけでも2つの都市の類似性を感じ取ることができる。もちろん、レストランやバーも多く、そのほかの観光スポットも充実しているうえ、ヨーロッパのなかでは物価も安い。
一方で、少し観光地から外れた場所を歩いてみると、ポルトガルが欧州危機前から低成長経済の国であったことを思い起こさせる風景が広がる。
時代遅れ感のある家電や日用品を販売する店や、土産ものとしても需要が低そうなレースやリネンを販売する店。昔からあるような小さな専門店が健在なのは、ヨーロッパでは見かけない光景ではないが、リスボンのこうした店にあまり将来性は見出せなかった。
ただ、今後、観光客の増加とともに、街が再生し、産業が活性化していく可能性はあるだろう。実際、現地で知り合った地元の建築家の話だと、現在はもっぱらリノベーション案件に取り組んでいるという。
「フィナンシャル・タイムズ」によると、昨年は、リスボンとポルトガル北部の中心都市ポルトで30軒のホテルの改装工事が行われた。街のジェントリフィケーションが進み、家賃が高騰することは、住民にあまり歓迎されることではないが、外国人観光客が増える傾向は続きそうだ。