2007年のギリシャの財務赤字発覚から、同国国債の格付けの引き下げ、ユーロ為替の下落、そして欧州経済と世界経済の景気悪化をもたらした、欧州ソブリン危機。
約10年前の出来事とはいえ、ポルトガルも含めた各国が打撃を受けて深刻な財政赤字を抱え、「PIIGS」(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)という不名誉な名称で呼ばれていたことは記憶に新しい。
しかし、2013年以降、各国とも最悪な状況を脱し、とりわけポルトガルでは景気回復が進んだ。ポルトガルの2013年の失業率は16.4%であったのに対し、2017年には9%まで回復した。GDP成長率は1%前後の低成長ではあるが、1人あたりのGDPは2012年以降、緩やかに回復している。
2017年9月、アメリカの大手格付け会社のS&Pグローバル・レーティングは、ポルトガル国債の格付けを「ダブルBプラス」から、投資適格の最低水準である「トリプルBマイナス」に引き上げた。
ギリシャなど「PIIGS」の他国と比べて、ポルトガルは順調なスピードで景気回復を果たした。専門家の評価によると、欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)で構成される、通称「トロイカ」の支援プログラムのもと、公務員の賃金引き下げや増税を含む財政再建や、輸出の伸びなどが背景にあるとされる。
また製造業などでは、設備投資による生産性の向上を図った企業も見られたようだ。ファッション業界においても、アパレルや靴などの生産拠点として注目されつつある。
ポルトガルのアントニオ・コスタ首相は、今年1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)での「Euronews」のインタビューでは、賃金や年金の向上はすでに進んでおり、さらなる経済成長に向けての意欲を示した。